リルティングアワー6【BE:FIRST】

相棒、傍観者に徹する ページ15

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そろそろ許してあげたら？と言うべきか、真人はとても迷っていた。3日前の朝に2人が言い合いをしながら楽屋入りしてから、どうも様子は元に戻っていないみたい。

ただ2人にしか分からない空気に、外野が口を出すのは違う気がして。




「まじでみづが口聞いてくれねぇ」

「ははっ……」

「どう思う？色違いってそんな貴重？」

「んー、初登場の伝説レイド色違いだから、ONE PIECEカードで言ったらスーパーパラレルくらいかなぁ」

「………………マジやらかした」




珍しく舜斗がAのことを自分に相談してくるから、ほんの出来心で少し意地悪な誇張をしてしまった。

本当はONE PIECEカードで言うと、スーパーシークレットくらい。

まあそれでもAが怒る気持ちは分かるけど。




(本当いい性格してるわぁ、ミヅキ)




竜平曰く『折角やし どこまで喋らんと生活できるかやってみる』と、Aが言ったとか言わないとか。

彼女の気まぐれな実験に付き合わされた舜斗は、真人の目からは心なしか髪の毛先からなにまで へたって見えた。




「しゅんとー？！」




突然、楽屋の扉の向こうから呼ぶ声が聞こえてきて、猫背になっていた舜斗の背中がピンと伸びる。3日ぶりにAが彼の名前を口にしているのを聞いて、真人は思わず「おっ」と声を漏らした。




「、…………あー？」




素直になれば良いものを、気怠げな返事をする舜斗に真人は吹き出しそうになった。これで“ちょっと来て”とでも言われたら、すっ飛んで行くくせに。




「今日夜何食べるー？」




この数日の冷戦が嘘のような、何気ない問いかけ。
どうやらやっと、Aの怒りは治ったみたいだ。まあそもそも怒りなんて、舜斗が謝り倒した頃から薄れていたのかもしれない。

案外、Aが始めた実験は、彼女自身が
『舜斗と話さんとか無理やわ〜』と終わるきっかけを探していたりして。


(よかったねシュント)と、真人は隣に目を向ける。
素直になれよなんて口にしなくてよかった。目に見えてニヤついちゃってまあ……。




「…………ラーメン」

「先帰らんと待っててー」

「あー」




そう返事をしてスマホを手にする舜斗。
ロック画面を解除したと思ったら、真っ先に口コミアプリを開く流れを真人は横目で見ていた。




「美味しいラーメン？教えたげようか」

「まじ？教えて！」

「ははっ。うん、えっとね……」




本当可愛いなぁ、シュントもさ。

そうやって言い聞かせながら、羨ましいという気持ちを胸の奥に追いやる。“素直になれよ”は、どうやら真人が自分自身にかけるべき言葉のようだ。



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