リルティングアワー6【BE:FIRST】

色男、ウザいけど構いたい ページ2

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さっきから耳元でガチャガチャとマジックハンドを鳴らしてくるAに、樹音はウンザリしていた。




「おい、なんだお前」

「ヒェッ！こわぁ(笑)」




しばらく無視していたが、ついに我慢できず ちょっとビビらせる感じで声を低くして反応してみれば、言葉と裏腹にニヤニヤしながらマジックハンドをフリフリと揺らして見せる。




「ノンちゃんこうゆうの苦手やと思うねんな〜」

「馬鹿にしてんな？お前、舐めてんな？お前」

「ふふふっ……なーあー今日のノンちゃん怖い〜」

「それはいつにも増してミヅキがウザいからじゃない？」

「マナちゃん……爽やかな声でディスるんやめて」

「確かにウゼー」

「やめてやなぁ、舜斗まで酷いやん」




2人の言葉に眉尻を垂らしながらも、カシャカシャとマジックハンドを鳴らすのをやめない。むしろなんなら、さっきより激しく鳴らしている。

いやお前もやめろよ。と視界の隅で揺れるマジックハンドを掴んで引っ張った樹音。Aはその力の強さに少し目を見開いて、釣られるように彼の方へよろめいた。




「おっと、」

「……ねえ。しっかりして」

「ノンちゃんが引っ張るからやん」




バランスを取ろうと樹音の腕にしがみ付く。ウザがっていても、しっかり腕に力を入れてその身体が倒れないように支えた。

それを見ていた礼王が「バランス王にはなれなそうだな！」と煽ってくるが、本気出したら違うもん！とAは思う。




(でもなー、これは危ういなー)




足元の青いマットを少しだけ踏む。思ったよりも跳ね返りが良くて、(これは意外とバランス取りづらいかも)というのが正直な所感だ。




(まっ、この面子なら負けへんけどな！)




カメラが回って、壮大と礼王のルール説明を聞きながらも内心余裕をぶっこいている。そんなAの思考は態度にも出ていたようで。




「なんか腹立つ顔してるよミヅキ」

「いやホンマに自信あるわ。……待って、腹立つ顔って何？」

「鏡持ってこようか？」




ひどい！と隣にいた樹音の顔を見上げる。するとそこにはニヤニヤ笑う彼がこちらを見下ろしていて、腹立つ顔なのはどちらか。
(そんな悪口言っとるノンちゃんには負けへん！)という決心は固いものとなった。


そんな中、




「ミヅキちゃんは耳狙おう」

「間違いねぇ、あいつは耳だ」

「10秒もたねーかもな」




マットを挟んだ反対側にいる竜平、壮大、凌輝がコソコソとそんな話をしているのを、能天気に樹音に絡み続けるAは気付く由も無かった。






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