リリス・カーペット【魔入間（夢小説）】

セイレーンと私。 ページ27

顔出しNG、性別は女悪魔、圧倒的な歌唱力で老若男女問わず魅了する…名はリリスと言った。彼女の歌声を知るのは、学生時代の級友であるカルエゴとシチロウ、オペラ、そしてスージーやダリ、サリバンと言った教師だけであった。

時にはアクドルのような周りを明るく照らす歌、恋愛でどこか男を弄ぶ色気のある歌、失恋した自身の気持ちを代弁したような愛の曲、両片想いなのに進展しそうで中々進まない焦らす曲、男装の麗人と言ったハスキーボイスで男のアクドルを思わせる声を発するAに皆が聞き惚れ酔いしれる。随分昔からこうして悪周期の間は歌いまくりストレスを発散するAにファン層も多い。

数十年前、まだ学生の頃にカルエゴとシチロウに悪周期の発散の仕方が未だに分からないと相談したのが事の始まりであった。その時シチロウは「Aちゃんはセイレーンの末裔なんだよね？」と尋ね頷くAにカルエゴは「なら歌えば良いんじゃないか。お前自身、歌うの好きだろう？」と言われたのだ。

それは目から鱗が落ちると言うもので、流石に盲点だったAは早速悪周期が近付くと歌を歌うようになった。そこからダリに「折角声が綺麗ならそのまま動画に投稿して見たら？」と薦められ、声だけで画面は何もない殺風景な動画を投稿したのである。爆発的にクチコミで拡がり、一躍時の人となったAは別の意味で頭を悩ませる事となった…が、今はもう開き直ってしまったけれども。

「はぁ、歌うの楽しい…」

顔出しNGだから見せられない程に酷い顔なのか、そもそも女ではなく男なのでは？リリスというのは本名か？リリスの情報求む、リリスの事がもっと知りたい。とか憶測が飛び交う中で歌って満足したAは明日も仕事頑張らないとなぁ…とス魔ホをベッドのサイドテーブルへ置いてゆっくりと目を閉じたのだ。

ーーー

「リリス、人気があり過ぎて怖いわ」

ポツリと独り言に呟いたAに事情を知る教師達はクスリと笑う、若い衆の教師陣は久しぶりにリリスの投稿を聞いて耳が孕んだとか、声だけでいい女なのが分かるとか、夜から何度も聞き直して夜更かししそのまま朝を迎えてしまったとか聞いているこちらが気恥しく感じてしまう。生徒内でも大盛り上がりで、何年経ってもリリスの声は最高だと言われどこか誇らしくもなる。

ついついご機嫌に尻尾を揺らしたAに対して、こっそりと近付いて話し掛けたのは学生時代に彼女へ動画投稿を薦めた悪魔教師…ダリであった(続く)

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