【wrwrd】ファットブルームの憂鬱【短編集】 (ページ6)

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ドッペルゲンガー/ut ページ6

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「「俺？」」

俺が二人いた。向こうもびっくりしているようだ。

「真似すんなよ」

「お前こそ」

傍から見ると阿呆みたいな会話だが、俺と向こうの俺からするとかなり真剣だ。

編集作業をしていて、ふとトイレに行って帰ってきたらこいつは済ました顔で俺のパソコンを操作していやがった。そしてこの有り様だ。

「どけ、俺のパソコンや」

「俺のでもあるやろ」

はあ、と同時に溜息をつく。この阿呆面を見ていたら何だかイライラしてきた。それは向こうも同じだったようで、机の上にある煙草を同時に掴んだ。そしてまた喧嘩。

こいつはどこへ行くにも付いてきた。みんなと会う時も、女と会う時も。お互いがお互いに邪魔がって、周りも苦笑い。もう嫌や。

一ヵ月過ぎた辺りで、既にお互いは理性を失っていた。

終わらせよう。

夜中、相手に悟られぬよう枕元に隠しておいた果物ナイフを取り出す。初めての殺人だ、でもこれで全てが終わるなら。

物音を立てぬようゆっくりあいつが居るであろう場所に近づくと、思い切り銀光を放った。

ぶすっ

鈍い音を立てたナイフは、自分の腹に刺さっていた。そして目の前には驚愕と絶望の表情を湛えた俺がいる。手には柔らかい感触。

流石俺の分身。同じ事を考えてる。

ゴポッと黒っぽい血を大量に吐き、俺ともう一人の俺は倒れた。

薄れ行く意識の中、思い出していた。

自分のドッペルゲンガーを見たら死ぬんだったな。