【wrwrd】ファットブルームの憂鬱【短編集】 (ページ38)

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Hideaway/em ページ38

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彼は、彼の書斎である此の部屋で、異様に存在感を放つ扉へ歩く。
其の重厚感のある、ミルクティーの様な明るい茶色をした扉は彼の左手で訳無く開いた。

軋み乍ゆっくりと開く扉の向こう側には、此の世とは思えない程に息を呑む世界が広がっていた。

緑の柔らかな芝生の上には、赤青黄色と色とりどりの花々が咲き誇り、大小様々な蝶が舞っている。
小高い丘の向こうには、白い風車が蒼い空に浮かぶ雲と同じスピードで回っていた。

色彩に溢れた、ジュエリーボックスの様な其処は私の心を奪うには十分過ぎた。

『……！』

「どうです？私のとっておきの場所なんです」

『で、でも何でっ……こ、ここは貴方の書斎なのに……』

すると彼は白くすらりとした人差し指を、少し尖らせた、見るからに柔らかそうな紅色の唇に押し当て「シーッ」と細く鋭く息を吐いた。

「これは私と貴方の秘密ですよ？」

其の優美な所作に目を奪われた私は只、コクコクと無言で頷くしか無かった。