【wrwrd】ファットブルームの憂鬱【短編集】 (ページ33)

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Anökumene/sn ページ33

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現在此の世界の全体にして約99%の地域に人類は居住出来ません。乾燥し切った灼熱の砂漠に、或いは永遠に溶けることの無い分厚い氷に、或いは未知の生物たちの巣食う深い森に覆われています。

そんなAnökumene(居住不可能地域)を造る"神"が居ました。

彼は何時も暇でした。なので一つ、此の世界を創ったのです。
最初は蒼い空と海に囲まれた豊かな世界で、人々は其々の暮らしを満足に行い、笑顔は絶えませんでした。
しかし、神は笑顔にはなりませんでした。暇で暇でしょうが無い。そんな神は一つの考えに至りました。

"争い"を与えてみよう

神は豊かな世界に一か所だけ、雑草すらも生えない枯れた地を造りました。
突然生き辛くなった地に、其処に住む人々は絶望しました。年々死にゆく者共を見、残された人々は隣の地へ助けを求めます。然し隣の地は自分たちの地も枯れることを恐れ、分け与えようとしませんでした。
人々は争いを起こします。勝者は何方か。そんな事は如何でも良い。神は事の顛末を嬉々として眺めていた自分に驚きました。そして気づきます。

もっと争いを見たい

神は一つ争いが終わる度にまた一つ争いを起こしました。
何時しか人類の住める土地は狭くなり、武器は銃や剣から弓矢や棒になりました。既に一人死んでしまえば損失は大きく、誰も争いたくありませんでした。
然しそんな事はお構い無しに神は地を可怪しくします。

争って、争って、とうとう最後の一人になりました。
独りになった金髪の男は神に問いました。

貴方は結局の所何がしたかったのですか

神は答えます。

争いが見たかっただけだ

そんな自己満足で我々は殺されたのですか

お前らが殺し合ったのだろう

男は両目から大粒の涙を流し神を睨みました。足元には男の仲間であったであろう人間達が倒れています。

お前は神ではない

だから何だ

神よ、気付いているか？

神は分からない様子で男を見ました。
男は何故か、一発しか残っていない銃をこめかみに押し付けています。

俺が死ぬと、この地も死ぬ
生きている地はここで最後だ

神は、はっとした表情で身を乗り出しました。

つまり、この世界自身であるお前も死ぬと言う事だ

やめろ！

男は嘲笑い、引き金を躊躇うことなく引きました。