【wrwrd】ファットブルームの憂鬱【短編集】 (ページ26)

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Heavy Rain/os ページ26

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雨の降る中、私は一人で震えていた。
大粒の雨は頭と背中、そして足を濡らした。

「大丈夫めうか？」

男は大きな傘を持ち、眉根を下げ心配そうに此方を見ていた。
私はそれを無視し其の場に蹲る。背中が冷たい。

「ほら、こっち来るめうよ」

脇の下に温かい感触がしたと同時に身体が宙に浮いた。私は小さくにゃあと鳴く。

何処へ連れて行かれるのだろう。私の居た茶色の箱は後ろへどんどん遠ざかって行った。ザアザアと降る雨の中、あの箱からしか見えなかった景色の外へと連れ出される。

ふと上を見上げると今まで見た人間の誰よりも優しく、慈愛に満ちた顔があった。そんなアガペーを、私に、世界の全てに忘れ去られたような私に、注いでくれるというのか。

優しい匂い。その手の温かさに気付けば微睡み、何時しか眠ってしまった。次には、今までとは違う美しい世界で目を開ける事になるのだろう。