赤い子鹿を助けたら、見知らぬ紳士に地獄へ攫われました。２ (ページ39)

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第八十七話ページ39

「アラスター、大丈夫？」

『っ……』

苦しそうに顔を歪めるアラスターの手を、優しく握る。

悪魔であっても体調を崩してしまう事があるらしく、例に漏れずアラスターもまた体調を崩してしまったようだ。

「食欲ある？」

『……』

声が出せないのか、首をフルフルと横に振るアラスターの頭を撫でながら、額に流れる汗を拭く。

チャーリー達に薬を買ってきて貰えるようには頼んであるが、何かお腹に入れてからでないといけないだろう。

「……そうだ、アラスター少し待ってて」

一旦アラスターから離れ、キッチンへ向かう。
スルッと食べられるものであれば、食欲が無くても入るだろう。

幸いにもニフティの為にと買っておいたゼリーの材料がある。
甘さを控えめにすれば、彼でも食べられると考え、早速用意を始める。

「……すぐ戻るから待ってて」

うねうねと後ろからアラスターの影が擦り寄ってくる。
体調が悪くても影は元気のようだ。
宥めるように影を撫でながら、甘さを極限に控えたゼリーを持って部屋へ戻る。

「お待たせ、影なんて操ってたら疲れない？」

『……ｼﾞｼﾞｼﾞｯ』

「ならいいけど、ゼリー作ってきたよ。はい、あーんして」

『っ……』

返事代わりのノイズ音を聞きながら、アラスターへゼリーを食べさせ、額にタオルを置く。

他に何かしてあげられることはないかと考えていると、アラスターが服の袖をグイグイと引っ張ってきた。

「ん、どしたの？」

『……ｼﾞｼﾞｯｼﾞｼﾞｼﾞｯ』

「……分かった、傍にいるよ」

何となく言っている事が分かって、頭を撫でる。

安心したのか、私の手を握ったままアラスターは静かに眠った。

眠った事を確認してから、毛布をかけ直し、お腹をポンポンと優しく叩きながら、いつかの時のように子守唄を歌う。

「……早く良くなってね、アラスター」