20 ページ20
.
息が止まった気がした。
瞬きすることさえ忘れて
目の前の景色にのめり込む。
「……廉？」
一瞬にして視界がぐらつき
目頭が熱くなっていくのを感じる。
廉「A…」
起き上がろうとする廉に
ゆっくり近寄り、
その存在を確かめるように
恐る恐る頬に手を添える。
これは今も変わらない私の癖だった。
「……廉、」
自然に涙が溢れ
ベッドの真っ白なシーツに
染みをいくつも作っていくと
廉の長い指がだんだんと伸びてきて
私の目元に触れる。
「…私、本当に毎日不安で…っ…、もうどうしていいか分からなくて…っ……」
大きく息を吸いながら
途切れ途切れに言葉を発すると
目の前の廉が優しく笑う。
廉「A、ここ座り」
ベッドの横の椅子に腰を下ろすと
大きな掌に震える指先を
ぎゅっと包まれる。
「…生きててよかった」
廉「ははっ、そんな簡単に死なへんよ」
その笑顔に堪らなく安心して
また涙が頬を伝った。
廉「てか。もう、俺に会いたくないんじゃなかったっけ？(笑)」
廉と最後に言葉を交わした日。
私が廉に向けて放った
偽りに溢れた言葉。
「そんなこと、ほんとは思ってない」
廉の目の色が変わった気がした。
そして、薄い唇が小さく開いて
溜め息をこぼす。
廉「なぁ。俺、期待してええの？」
「……え？」
廉「そうじゃなかったら、お前ほんま酷い女やで」
少し俯くと肩を抱き寄せられて
フワッと優しい香りに包まれる。
廉「でも、別にそんなんどうでもええから。
もう、会いたくないとか言わんといて……」
私、このあと廉にどんな言葉を
掛けたんだっけ。
そんなことさえ思い出せないぐらい
胸がいっぱいで
余裕がなかったような気がする。
.
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 1268人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「永瀬廉」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
みう(プロフ) - umekoさん» コメントありがとうございます^^最初は廉くんオチにする予定だったのでタイトルがそのままになっていました。消させて頂きます。最後までご愛読頂きありがとうございました。 (2020年9月12日 1時) (
レス) id: 3c79c161a1 (このIDを非表示/違反報告)
umeko(プロフ) - はじめまして！楽しく読ませていただきました。そして、私も廉くん落ちだと思っていました…タイトルのRen.Nはなくても良かったんじゃないでしょうか？あとがき2を読まなければモヤモヤしたまんまでしたので、ありがとうございました★ (2020年9月12日 1時) (レス) id: 8cd4616c45 (このIDを非表示/違反報告)
しおり(プロフ) - みうさん» ありがとうございます。後日また一話から読み返してみようと思います。Ren.Nと書かれていたので永瀬落ちかと思って読んでいたという先入観が邪魔をしてしまったのかなと思います。 (2020年9月11日 18時) (レス) id: 199b427b1e (このIDを非表示/違反報告)
みう(プロフ) - しおりさん» コメントありがとうございます^^ながくなってしまいますので後々あとがきに追記させて頂きますので少々お待ちください。最後までご愛読頂きありがとうございました。 (2020年9月11日 17時) (レス) id: 3c79c161a1 (このIDを非表示/違反報告)
しおり(プロフ) - lieというのはもしかして「嘘」と「横たわる」の二つの意味を持たせていますか？完結してもなお煮えきらない感じでむず痒いですが、結局のところはどうなのでしょうか？伏線回収や解説も載せて頂けると幸いです。 (2020年9月11日 16時) (レス) id: 199b427b1e (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：みう
| 作成日時：2020年8月5日 18時
