非戦闘員様 ページ6
「あ、孔雀ん！」
「わっ」
飛びかからん勢いで飛んできたヘリオに、孔雀んことマラカイトは身を縮めて後ずさる。間一髪、ヘリオの長く艶やかな髪はマラカイトの白い肌にヒビを入れることはなかった。
「ちょっと、ヘリオトロープ！おれはフォスフォフィライトとそう変わらない硬度なんだから気をつけろと言っているだろ。美しいおれの髪ひとつでも欠けたらどうしてくれるんだ」
マラカイトは明暗の様々な緑色の髪を撫でながら、むうっと口をへの字に曲げてヘリオを睨む。
マラカイトの硬度は三半。他の宝石と擦れでもすればすぐに割れてしまう。彼は自身の硬度をきちんと理解しているといえるのだが、その口ぶりはやや高慢過ぎるところがある。しかしヘリオは気にした様子もなく眉を下げた。
「ごめんごめん、ちょっとひとを探していたの」
「コロラドアイトなら見ていないぞ」
「あら、孔雀んにもお見通し？はーい、ありがとう！」
「あまり走り回るなよ、高硬度」
「ううっ……分かったよう。あ、そうだ！」
「？」
再び慌ただしく去って行こうとしたヘリオはピタリと足を止める。マラカイトは怪訝そうに首を傾げた。
「聞いた？フォス、先生の声でバラバラになっちゃったらしいのよ。孔雀んも気をつけてね！」
「おれを割りかけたおまえが言うか」
「ご、ごめんってば！」
じとりと睨めつけられ、ヘリオは言葉を詰まらせる。
「……ま、孔雀んは無茶しないし大丈夫だとは思うけれど」
「当たり前だ。美しく壊れやすいおれが戦うわけがない」
「……やーいナルシスト」
「おれが美しいのは事実だろ」
ヘリオは口元に手を当て、フォスがいつもマラカイトに言うのを真似た。しかしマラカイトは一切気に留めた様子もなく、ふんと鼻で笑う。
「ふふっ、そうね。僕はコロラドアイトの方が美しいと思うけど」
「とっとと去ね」
「はーい」
歪みない言いように、マラカイトは口元を引きつらせた。軽く手で追い払われ、ヘリオはからからと笑いながら走り去る。残されたマラカイトはひとりため息をついた。
「強いコロラドアイトならば兎も角、フォスフォフィライトはおれ以上に戦いに向かないだろうに。何で戦おうとなんかするんだろうな」
「……さあ？孔雀んと違ってナルシストじゃないからじゃない？」
布を取りに行っていたレッドベリルに、呆れたような声でごちる。レッドベリルはくつくつと笑いながら肩をすくめた。
「だっておれは美しいだろ」
「はいはい。ほら、試作品作るよー」
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作者名：ガマ花 ・Qual ・はんむらび。 x他2人 | 作者ホームページ：なし
作成日時：2018年6月23日 10時
