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阿部side


佐久間にあげた黒薔薇のネックレス。
あの意味、気がついてなさそうだなぁ?ふふ、その方が良いけどね。


「ありがとうございました、またご一緒出来たら嬉しいです」

思ってもない癖して、笑顔を貼り付けて共演者たちと挨拶する。
佐久間はとんでもなくワイワイしてて、すごいと思うけどね。どこから出てくるの、その元気は。

「あの〜」

またか、この人は。
さっさと帰りたいんだけど、ってブラックになってるね。

「何ですか?」

「阿部さんって、イケメンさんですよね。彼女居ないんですか〜?」

その問い掛け、愚問だよ。
あーぁ、空気が凍ってるよ。この人以外皆、俺と佐久間が相思相愛って知ってるのにね。
頭の中、お花畑かな。うん、絶対そうだよね。この人、何かのフィルター越しに見てるよね。

って思ってる言葉を全部押さえ込む。もうちょっとしたら溢れる位に思っているからさ、結構余裕ないんだけどな。でも、この人は知りたそうだし、と人あたりの笑顔を浮かべる。


「いえ、いませんが。それよりも大事にしている人が居ますので」

「えぇ、じゃあ、彼女になりたいです〜」

おい?!
気付けよー…。そもそもさ、彼女になりたいって言って、なれるものなの?違うよね?
だんだん、目が死んでるなと思うけど、この面倒な人どうにかして欲しい。居るだけで疲れる、体力消耗する。ブラックになってるけど、この際は気にしない。気にしてたら負けだよ。


「あれれ、阿部ちゃん〜!」

「お疲れ様、終わった?」

佐久間、ナイス。
危うく屍が出来る所だった。

「帰るでやんす〜」

「帰ろうか。それじゃあ、失礼します〜」

「え、待って下さい!」

ガシッと腕を掴まれる。いや、痛いんだけど?!力強っ。
その前に佐久間が静かにキレてる。怒らせたら怖いのは俺より、佐久間だったりして?

「あの、阿部ちゃんは俺のなんで」

真顔で言ったと思えば、ぎゅっと抱きつかれる。反射的に腕を回すと嬉しそうにしている佐久間に、これが狙いだったかと笑う。

そのあと、あの人は変わらず居たけど、佐久間が見事に撃退してくれたから助かった。
って思いたいんだけど、体力消耗しすぎて笑顔が崩せないんだよね。


「阿部ちゃん、お疲れ様」

「ん…」

疲れて何も出来ないから佐久間のされるがままに、撫でられている。
たまにはいいか、大人しくしておこう。


面倒な人と話すと、疲れるよね。

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作者名:まっくろねこ | 作成日時:2020年7月10日 23時

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