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阿部side



「…ただいま」

誰か聞く訳でもない。でも、無意識に言ってしまう。
誰かから「おかえり」と言われたくて。


おそらく佐久間は分からない、今の場所を。
過去の俺と関わりある人しか分からないからね。

なのにさ。


「阿部ちゃん!!」

こんな幻聴まで聞こえるようになったって事は、いよいよおかしいかな?


「あーべーちゃーん!!」

ブンブンと手を振って、ぴょんぴょんと跳ねている。どうやら、嘘では無い。

「佐久間、?」

「佐久間さん、でやんす!ってか、阿部ちゃん。急に居なくなるのびっくりしたんだけど!!」


「そうそう、俺らは知ってるけど佐久間は知らないからな?ちゃんと話せよ?」

ふと声をした方に向くと、ふっかと照が居た。
なるほど、その2人が連れてきた、って訳か。

「阿部ちゃん、ここどこ」

「何かめちゃくちゃ生活感満載!!」


とかなんとか、佐久間は不思議そうにしている。


ガチャ。
途端に扉が開いた。あ、帰ってきたか。

「あ、帰ってきてたのね〜。いらっしゃい、亮ちゃん!」


嗚呼、外向けの顔か。そりゃ、ふっか、照、佐久間が居るからそうなるよね。
亮ちゃん。
聞いて反吐が出るんだけどな。


「阿部ちゃんのお母さん?」

そう佐久間が聞いた途端、目の前の女の顔は凍りつく。

「出来損ないの親なんて言われたくないわね〜?」

「出来損ない、?阿部ちゃんめちゃくちゃ頭良いのに?」

嗚呼、やめて。
過去を引っ張り出さないで。それは禁句だよ。

「貴方、出来損ないの何なの?」

これは佐久間に被害が出そう、どうしたら良いんだろう。

「さっきから聞いてたらさ、阿部ちゃんの事出来損ないって言うのは気に食わないな??」

「本当に。ってか、阿部ちゃん何も言い返してないし」

ふっかも加わったかな。一応、ボロボロに言われても親は親だからね。
酷くは言えないんだよ。

「ふっか、1つ言わせて。言い返してない、じゃなくて、言い返しても無駄だと諦めただけだから。何でも諦めて現実を受け入れる事も必要だよ」

「阿部、それは違う。諦めるってそんな簡単じゃない。いつもの頭脳明晰な阿部はどこ行った?それで木っ端微塵にしてやれよ」

照の言葉に少し考える。
本当に、言い返すのを諦めたのか。いや、誰も自分の意見を聞かないと思い込んで、自分から口を閉ざしただけなのではないか。

それなら。

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作者名:まっくろねこ | 作成日時:2020年7月10日 23時

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