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阿部side
あれから水分補給をしっかりして、佐久間は調子がよくなっていった。
めちゃくちゃ肝が冷えた。急にカタカタ言って寒そうにしてるからね。
それと、冷房は効かせすぎは良くないと反省。
今は夜になる少し前、ぼんやりと空が明るい時間帯。
所謂、薄明と呼ばれる時間帯。
儚い雰囲気の空を背景に、佐久間にあった少し明るい曲を掛けていく。
俺はそれを黙って、動画に収める。たまには、外に出て佐久間が踊っているのをリアルタイムで見たいからね。
いつもは佐久間が自分のスマホで撮ったものを送ってくれる。だから、直接見るってことがあまり無い。
ぼんやりと様子を見ていたら、いつの間にか終わっていて、阿部ちゃん?なんて佐久間が不思議そうにしていた。
「…佐久間って、儚いよね。どこかフッと居なくなりそう」
「え、阿部ちゃんどうしたの!?暑さでおかしくなった!?」
いや、おかしくなったのはどちらかと言えば佐久間じゃない?俺はおかしくなってない、断じて。
どうしたのか気になる佐久間を落ち着かせてから、少し考える。
佐久間は儚い。
金髪で、ふわふわな髪だからか?
でもそれはいつもの佐久間。考えられるのは…。
「時間帯や場所、その時の状況が、関係してそうだね」
時間帯によって、人は思う事も違う。さらに、場所によっても違う。加えて、状況によっても異なる。
例えば、時間帯が朝で、混雑している駅という状況、ホームという場所になると、気持ちは憂鬱になる。だけど、同じホームという場所でもガラッと空いているという状況で、時間帯が夕方だったら、きっと違った思いになる。
つまり、薄明って時間帯と空を背景にできるこの場所、ストリートダンスをしている佐久間を見ているという状況が、俺に佐久間を儚いと思わせている。これが薄明って時間帯じゃなくて昼間だったら?色々と変わってくる。
「ふふっ…面白いな」
「え、阿部ちゃん。とうとう頭おかしくなっちゃった?」
「違ぇよ。撮り終わったでしょ?帰るよ」
「ちょ、待ってよ、阿部ちゃん〜!」
慌てて付いてくる佐久間を横目に、ふっと微笑む。
始終、佐久間がめちゃくちゃ心配していたけど。
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作者名:まっくろねこ | 作成日時:2020年7月10日 23時