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馬鹿な女 ページ1

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彼の 純粋に訴えかけるようなその熱い視線が 私には重荷だった。


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彼が私を愛している事は随分前から知っていた。
というか、遠回しではあるがそれらしいことを本人に言われた事がある。私と居る時の彼の佇まいを見てもそうなのだろうと察しが付く。それくらい、彼は分かりやすい。


彼はずるい人だ。
自身の思いは耐えられまいと一方的にぶつけて来るくせに、こちらの返答は一切聞こうとはしない。


彼はそういう人なのだ。
自分に自信が有る訳でも無い訳でもない。そういう、中途半端な人間なのだ。


そんな所が私は好きだと感じる。どこか欠落している彼の感性は私の心を酷く揺さぶる。
そんな私も一概にまともな人間とは言えないのだろう。


彼は愚かな人だ。
私に慈愛を抱いておいて懐には別の女が居る。私以外の女を抱いた手で、私を宝物のように優しく扱う。

まるで私が一番とでも言うような熱い視線は、時々私を泥酔させる。彼は私が他に女が居る事を知っている事を知らない。

それでも彼はイケナイコトだと知りながら 私を選び、私を弄ぶ。



私は彼を愛していた。そう、愛していたのである。しかし、私がどんなに彼を想った所でどんな結末になるかは安易に予想が付くだろう。きっとその未来は変わりやしないのだ。



私がまだ知り得ない彼の一面に、私は更に恋焦がれる。

彼の全てを知りたい。知り尽くして、彼の目に映る世界も 心も血も臓器も、骨の髄まで一つ残らず私の物にしたい。

彼との思い出を築き上げる度に、この行き場の無い欲望はひしひしと募っていく。



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作者名:レネ | 作成日時:2024年1月21日 18時

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