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Aが浴場に入った頃に風呂から上がった爆豪は、彼女とすれ違う形で部屋に戻った。
電気がついたままであったことに多少苛立った爆豪であったが、勉強机の上に置かれた一枚のメモを見つけた途端表情を緩めた。
「……きったねえ字」
まるで幼稚園児が書いたみたいな乱れた字だと爆豪は思った。
書き慣れていないので当たり前ではあるが、彼にとっては何か特別だったのかもしれない。
その乱され歪んだ文字を指でゆっくりとなぞった。
人差し指の腹が紙の上に乗った鉛筆の粉をすくっていく。
暫時机の前でそうしていたが、風が窓を揺らす音で正気に戻った。
そして喉の渇きに気づいた爆豪は冷蔵庫からミネラルウォーターを取り出して一気に傾けた。
水が喉を通る音だけが部屋中に響くようで彼は変な気にさえなったが、それは近づいてくる足音で掻き消される。
「ただいまーー!!!」
正確には、煩すぎる声とその人物の存在に、だ。
「あ、勝己!勝己もおかえりなさい!それお水?」
「だったら何だよ」
つれない返事はいつも通りの爆豪。
そして笑顔を絶やさない今日通りのA。
「私も飲みたい!一口だけ頂戴?」
問題発言なのか分からない、しかし衝撃的な発言に爆豪は思わず息が詰まった。
「はあ!?」
「わっ」
「変態かよ!!」
「えっ違うよ」
Aは彼の個性なので特別気にする必要はないのだが、一応思春期の爆豪からしたら気にしざるを得ない問題なのだった。
Aは理由などなく女の姿をしていた。
「そんなに飲みてえなら下の自販機で買ってこい」
「ええ〜?でも一本もいらないの。勝己の少しくれるだけでいいのに」
「それが嫌だって言ってんだろ」
「ケチーー」
彼女はずいぶん聞き分けが良かったが、あまりの引きの早さに爆豪は少しだけバツの悪そうな顔をする。
濡れた髪の毛をタオルで絞ったAはベットに腰掛け鼻歌を歌い出した。
それは10年前によく耳にした子供番組のオープニングの曲だった。
「あ、私もこのベットで寝ていいよね?私細いから、狭かったら壁際に追いやっていいから」
「……何でテメェが壁側前提なんだよ」
「だって女の子だし」
「いい度胸してんなコラ。女だからって俺が手加減すると思ってんのか」
「実際してたよね、体育祭の時お茶……」
強制的に塞がれた口は夜が明けるまで開くことは禁止された。
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りと(プロフ) - KoKoRuさん» そうなんです、爆破だからもっと爆発的なイメージを持たれてしまうかな、と思って描かせていただきました。参考になったならとても嬉しいです!(´˘`*) (2018年1月22日 19時) (レス) id: 2e41884d99 (このIDを非表示/違反報告)
KoKoRu(プロフ) - なんかイメージよりフワフワした感じだけど、こっちの方が可愛いと思うので参考にさせていただきます! (2018年1月21日 22時) (レス) id: 43321ef465 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:りと | 作成日時:2017年12月24日 21時