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「もう私ダメや…。Aちゃんの心が綺麗すぎて消えたい…」
「…何事ですの?」
湯船に浸かった麗日が顔も見せられないようで手で覆い隠し、零した。
近くで同じく湯に浸かっていた八百万が悲惨なものを見る目で尋ねると、麗日は震える声で語り出した。
「Aちゃんってかなり変人やん?個性的な人が多いA組の中でも相当やん?」
「まあ…。失礼ですが否定はできませんわ」
「なのに可愛いでしょ?」
「ええ」
「そこが罪深いんだよ」
まだ理解が追いついていない八百万は不可解な麗日の思考を一生懸命に読み図ろうとしている。
クラスで一番最初にノックアウトされた麗日にしか分からない危うい魅力に、傍で聞いていた蛙吹がケロケロと鳴いて応えた。
「つまり言いたいことは、変人なのに素直でいい子なAちゃんが眩しいのね」
「そう!そうなの!!」
「……先程から変人変人と連呼していらっしゃいますが、Aさんにも当然聞こえてると思いますよ」
「うん!聞こえてるよ!」
麗日に習った通りおぼつかない手つきで体を洗っていたAは、振り返りざまに彼女を噂していた三人に向かって泡をかけた。
怒っている様子は微塵もなく、ただ遊び心でやっているようだ。
悲鳴をあげた三人をAは悪戯を達成した清々しい顔で笑った。
「お風呂って気持ちーね」
「でしょ?毎日入るんだよ」
「それは暑いね!」
会話の論点がズレていることを指摘するものは誰もいない。
指摘しても無駄だと諦めているのもあるが、それがAだと皆が受け入れているからだ。
たった1日でクラスに浸透したAは、きっと実態が現れる前からあの教室にいたんだろう。
不自然な気配も慣れない雰囲気もない。
おかしいくらい、彼女はA組に馴染んだ。
「そうだ、Aさん。お風呂から上がったら私おすすめのハーブティーをご馳走しますわ。どうぞお寛ぎになって」
「ありがとう!クッキーは?」
「もちろんご用意いたします」
「やったー!!私ね、抹茶のクッキーが食べてみたかったの」
無邪気な彼女にその場がさらに和むのを麗日は感じた。
隣の蛙吹も嬉しそうに鳴いている。
体を洗い終わり浴槽に飛び込んできたAによって飛び散った湯は、八百万が特別に入浴剤を入れてくれたものだった。
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りと(プロフ) - KoKoRuさん» そうなんです、爆破だからもっと爆発的なイメージを持たれてしまうかな、と思って描かせていただきました。参考になったならとても嬉しいです!(´˘`*) (2018年1月22日 19時) (レス) id: 2e41884d99 (このIDを非表示/違反報告)
KoKoRu(プロフ) - なんかイメージよりフワフワした感じだけど、こっちの方が可愛いと思うので参考にさせていただきます! (2018年1月21日 22時) (レス) id: 43321ef465 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:りと | 作成日時:2017年12月24日 21時