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「さっきのメール、どーゆーこと?」


壁に手をついて私の行き場を封じたままの蘭さんの声調は確実に不機嫌な様子で、彼のピリついた雰囲気に私は思わず言葉が詰まってしまう。


「っそ、そのままの意味です…」


「は?」


なんとか声に出して伝えた言葉も彼には届かなくて、即座に顔を顰めた蘭さんは私の頬に手を伸ばし無理矢理自分の方に視線を向けさせる。


「何?俺なんかした?」


「っ、」


彼と視線がかち合って、明らかに怒った様子の彼の目を見つめて私の瞳も揺れ動く。そんな顔しないでよ、期待しちゃうから。こんな時でもそんな事を考えてしまう私の目には時期に涙が溢れてきて「…は?」と目を見開く彼を他所に頬を掴まれた手に涙が流れていく。


「もう、貴方には会えません」


震える声でそう言うと彼の身体は固まったままで、彼の胸板を押し返そうと手をかけるも瞬時に手首を掴まれ無理矢理壁に身体を押し付けられる。


「はなして…っ、」


身体を暴れさせながら彼に抵抗するも彼の目は本気で、その姿に恐怖で身体が固まる私を他所に唇に顔を近付けられる。

キスされる。そう思った頃にはもう遅くて、彼との距離が縮まっていく時間に抵抗が出来ない。


「蘭!もうっ、探したんだけど!」


瞬時、唇が触れるまで残り数センチのところで彼の後ろから聞き覚えのある甲高い声が聞こえどくんと心臓が鳴り響く。咄嗟に私から顔を離し後ろを振り返った蘭さんは顔を顰めていて更に不機嫌そうな雰囲気が漂う。


「…オマエ、もう付けてくんなって言っただろ」


そこには昨日蘭さんと腕を組んで歩いていた女性が立っていて、胸元の空いたワンピースに甘い香水の香りを漂わせながら彼の元に駆け寄って行く。

嫌だ。心の中の黒いモヤが更に濃くなり涙が溢れ出す目を拭うことも出来ずに私はその場に立ち尽す。



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イオ(プロフ) - 続き楽しみです!更新頑張って下さい!! (2021年9月5日 19時) (レス) id: 750e30c04d (このIDを非表示/違反報告)
シーチキン(プロフ) - キュンッキュンッします!!更新楽しみに待っています! (2021年8月6日 7時) (レス) id: 05900c9320 (このIDを非表示/違反報告)
アオ - 灰谷兄弟好きなので嬉しかったです。続き楽しみにしてます。12年後の竜胆を作ってくれませんか? (2021年8月3日 4時) (レス) id: 87777bf704 (このIDを非表示/違反報告)
からあげ - 最近軽く蘭に沼ったと思ったらまんまと足元すくわれましたね笑 これからも楽しみに応援してます!! (2021年7月24日 0時) (レス) id: 6987777c86 (このIDを非表示/違反報告)
からあげ - 最近軽く蘭に沼ったと思ったらこの作品でどハマり…笑 これからも楽しみに応援してます!! (2021年7月24日 0時) (レス) id: 6987777c86 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:レモン | 作成日時:2021年7月19日 0時

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