純愛じゃない【灰谷蘭】

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今日の授業は全く集中出来なかった。終礼のチャイムが鳴り響き、教科書を鞄に詰めながら私は深いため息をつく。

昨日の件から、自分が何をしていたかあまり記憶に無い。走って帰ってご飯も食べずに一人でずっと泣いてたせいか目も頭も痛い。彼が隣に居た女の人とどういう関係なのか、知りたくもない情報を考え過ぎていたせいでろくに寝れてない。

もう彼と会うのは辞めよう、自分が苦しくなるだ。
私はそう思い、心做しか腫れた目を擦る。


「A、今日ほんと大丈夫？」


「うん、なんとかね」


友達の声掛けに苦笑いを零しながらそう言うも、未だ心配そうな顔つきで話しかけてくる彼女を宥め、バイト先へと向かう為校舎を出る。

歩いている途中に携帯を開き、メールを確認すると『新着メール1件』という文字が視界に入りどくんと心臓が鳴り響く。震える手で携帯のボタンを打ち、視界に入ってきた文章に目を見開いた私は咄嗟に視線を外し鳴り響く心臓に目を瞑る。


『今日、バイト終わり会いに行く』


簡潔な文章とその宛先を見て、溢れ出しそうな涙に下唇を噛み締める。忘れようと思っていた時にわざわざメールをしてくるのも、彼が打った適当そうな文章にも嫌気がさす。私は震える手で一つ一つ文字を打ち、深呼吸をして彼にメールを返信する。


『もう会えません』


私はメールの画面を閉じて目を瞑る。泣きながらその場に立ち尽くす私を見る周りの同級生達の事も、いつだって私を振り回す彼の事も全部全部どうでもいい。

恋がこんなに苦しいなんて知りたくなかった。



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