ご主人様に募われたい。【灰谷竜胆】 (ページ2)

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彼女が俺のドレイになってから数週間が経った。
Aは俺よりいくつ歳下なのかも成人しているのかも分からない。情報を見い出せないまま親父に死なれた為、九井が調べている最中だがまあ見た目的に18は超えているだろう。

彼女は比較的静かだった。唯一の親父が自決したというのにも関わず悲しむ様子も無く、葬式にも参列していなかったそうだ。感情が無いと言えば無いのだろうけれど俺の言うことには必ず応じていた。

『ぜってえ俺の許可無く離れるな』

一番初めに彼女にそう言ったきり、彼女は俺の後ろに着いて回ってきては無表情でその場に立ち尽す。
「犬みてえだな」九井もそう言うほどに彼女は俺の言葉に従っていくばかりだった。

彼女は比較的物静かな九井と馬が合うのか時より二人で世間話をしているところもよく見かける。九井も何だかんだAに甘いらしい。まあ俺も彼女の事を乱暴に扱う気はなく、ただの暇潰しで生かしてやっただけだ。

「おい、ちょっとその餓鬼寄越せ」

ふと俺の後ろに居たAの腕を掴み、自分の方へと引っ張った三途は彼女を別室へと引き摺りこもうとする。俺はそれを見て咄嗟にAの腰に手を回し三途の行く場を遮った。

「ちょっと躾けてやるだけだぜ？何焦ってんだよ」

「うるせえな、躾なら俺がやってる。余計なことすんなヤク中が」

「あ？」

不穏な空気を感じ取ったAは俺らの顔を交互に見ては不安そうな表情を浮かべる。そんな彼女を他所に「竜胆、首領が呼んでるぞ」という九井の言葉に俺は舌打ちを零しAの目をじっと見つめる。

「いいか、コイツに手出されそうになったら大声で叫べ。とにかく暴れろ」

「はっ、こんな餓鬼興味ねえよ」

三途の言葉に顔を顰めた俺は彼女の方を見つめると、「はい」と言って俺を見つめ返す彼女に安堵の息を洩らす。コイツが大声を出すとは思えないが短時間であれば俺も助けに行ける。

渋々三途の元に預けるのを承諾した俺を他所に三途はAの手を引っ張り別室へと連れ去って行った。

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