【文スト】月が綺麗ですね。

第拾弍話「後悔」 ページ12

気付いたらうたた寝をしてしまったようだ。

僕としたことがなんという失態……。


「あ、芥川さん」


元気になったらしいAの姿が其処にはあった。

それに少し安堵したが、その表情が沈んでいて心配になる。


「看病していただきありがとうございました」

「例など要らぬ。移ったら迷惑だと思っただけの事」


本当は違かった。

Aを助けたいと思ってしまった。


あんな感情は初めてだったと云える。


「今日は花を用意したんです。キスツスという花です」


何故？

何故彼女は僕に花を用意した。


何故そんな風に悲しそうな顔をする？


心がキュッとする感じが在った。

こんな気持ちも初めてで、気持ちが悪い。


心がモヤモヤとして、不快だ。


「芥川さん。月は綺麗だけど遠いね」


分からない。


貴女が何を僕に伝えたいのか。

僕には分からないのだ。


だから教えて欲しかった。


もしこの牢屋から出ることが出来たら、僕に教えてくれ。


「芥川さん。今日はもう遅いので寝ますね」

「そうか……」


もらった花束を抱えて牢を出た。


明日は早めに起きて此処に行こう。

何か、彼女の様子はおかしい。


この日、何故僕はずっと起きていようと思えなかったのだろう。

何故彼女の側にもっといてあげられなかったのだろう。


それを今も尚、後悔している。

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