第壱話「小娘」 ページ1
暗い廊下。
この先には死刑が先伸ばしとなった人間が閉じ込められていた。
僕は上からの命令でAという者の見張りをすることになって、この薄汚れた廊下を歩いている。
「何故僕が其のようなことを……」
最悪の気分だった。
いくら太宰さんの命令だから従っているものの、このような事をする意味が分からない。
さっさと死刑してしまえば良い。
早くも遅くもどうせ死ぬ。
牢の前につく。
此処がAのいる部屋だろう。
殺してしまった方が早い。
___一応言っておくけど。殺したら君もただじゃおかないからね……?
………あんな脅し、恐くはない。
だが、余計な体力を使うのは面倒だ。
牢の扉に鍵を刺して、回す。
カチャリと音が響いて扉が開いた。
どのような小娘が居るのだろう。
「………お初にお目にかかる。貴様がAと言うものか?」
小娘は此方をまじまじと見つめ、質問とはかなり外れた答えを返した。
「月が綺麗ですね」
僕とは間逆の白い髪を揺らして笑っていた。
月が綺麗と云ったがここは地下だ。
月などもちろん見えぬ。
変なことを云う小娘だ。
「貴様がAかと聞いている。それ以外の答えは受け付けぬ」
「否、私はAではありません。其の名はもう捨てました」
「以前はそうだったのだな」
「……はい」
「なら良い、A。今から貴様の見張りをすることになった者だ」
「否、Aではありません。其の名はもう捨てました」
このような所に閉じ込められながらよく話す女だ。
しかも傲慢ときた、本当に面倒な事。
「僕が其の名をやる。だから貴様はこれから死ぬまでAとして生きろ」
「…!……分かりました」
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夢見る少女☆*:(プロフ) - ねこ娘さん» ありがとうございます!そう言っていただけて嬉しいです。言葉の意味が分からないところがこの小説の醍醐味と言っても過言じゃありませんので (2017年4月7日 3時) (レス) id: cce1ac7323 (このIDを非表示/違反報告)
ねこ娘(プロフ) - はじめまして!!めっさ感動しました!!キャラが掴みづらいやつがれくんの気持ち(?)の表現の仕方とかとてもお上手です。夏目漱石の言葉とかそういう直接は伝わらないような言葉わざわざ鈍感そうなは芥川くん使うところとか、なんかとても心がキュッてなりました… (2017年4月6日 22時) (レス) id: 913331cd44 (このIDを非表示/違反報告)
夢見る少女☆*:(プロフ) - 白崎 ツキトさん» 感動してくれて嬉しいです!貴方の心の中にいつまでも残っていれば幸いです (2017年3月25日 16時) (レス) id: cce1ac7323 (このIDを非表示/違反報告)
白崎 ツキト(プロフ) - やばい、すごい感動した。この作品に出会えて良かったです…!!! (2017年1月29日 19時) (レス) id: b835084626 (このIDを非表示/違反報告)
青りんご@しらすの人( 。∀ ° )(プロフ) - 莱都さん» あの、コメ欄のチャット行為は禁止されているのでそろそろ… (2016年9月24日 2時) (レス) id: 77bd0378ca (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:13(ひみ) | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/5066ad29441/
作成日時:2016年8月14日 12時