約束 ページ5
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ふっ、と彼女の顔から笑顔が消える。どこか様子がおかしい。
警戒しながらも様子を伺う。
「…そう、よね。フフ、ごめんなさい。少し前に来た子を思い出しちゃって…。」
『…前?』
「ええ。今も時々電話がかかってくるのだけれど…申し訳なくて取れていないの。フリスクっていう、貴方よりも遥かに小さい子供よ。」
『…ほう、子供が落ちてきたのか?』
「そうなの、たまたま危篤の状態…、貴方ほど怪我は酷くはなかったけれど、無口な上無表情だから感情が読みにくくて…。」
名前の割には無表情なのか。フリスクは確か米国英語で子供が軽快に跳ね回る、とかじゃれて飛び回るとかの意味だった気がするが…。
「…まぁ、貴方もここにいるだけじゃ十分に羽を伸ばせないでしょう。貴方の荷物なら暖炉の傍のチェアに置いてあるわ。荷物を持ったら付いてきてね。」
そう言われ、椅子に置いてあるリュックを持つ。前は穴だらけだったり焦げていたりしていたけれど、今はものすごく綺麗に修復されている。裁縫が得意なんだろうか。
中を見てみるとライフルは可愛らしい袋に入れられており、拳銃やナイフ等の物も刃の部分が布で覆われていた。可愛い金色の花の刺繍が施されている。
それとは別に、ボロボロになった救急箱が入っており、中を確認すると包帯や絆創膏の予備が入っていた。救急箱の中身は既に仲間に使ってしまっていたが、予備を入れてくれたのか。
『…何から何まで、本当にありがとう。』
「良いのよ、感謝するならフリスクに会って言ってあげてね。私が変われたのもあの子のおかげだから。」
『…そうか、分かった。』
階段を下りると、壁紙の色も先程とは打って変わって奇妙な雰囲気だった。紫色の壁と床が延々と続く。
曲がり角を曲がると、そこにはトリィより少し高いぐらいの扉がある。
「この先へ行ってしまっては、もうここには戻ってくることは出来ません。それだけは約束してください。」
『…、あぁ、分かった。ヤクソク、してやるよ。』
ぎゅ、とトリィが拳を握った。
「…行ってらっしゃい、私の大事な子。…元気でね…。」
そういい俺を抱きしめるトリィ。初めて、母親らしい温かさに触れられたような気がして振り返ることが出来なかった。
『…行ってくるよ、トリィ。…いや、…母さん。』
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はしばみの揚げ物(プロフ) - お騒がせしました、作品シリーズ一覧から飛びますと下書きページに飛んでしまうのでしっかりと下から飛んでくださいな皆様(* 'ᵕ' ) (2021年10月30日 8時) (レス) id: f8654c08a0 (このIDを非表示/違反報告)
はしばみの揚げ物(プロフ) - 真面目な話、割とバグらせちゃったから下のこの小説の続編を見るは押さないでね!バグって(自分の頭が)下書き&パスワードつけたまんまで忘れちゃった☆ URL貼っておくのでそちらから飛んでください…!お手数かけます!!アホ抜かしてすいませんしたぁ!!!!!! (2021年10月30日 0時) (レス) id: f8654c08a0 (このIDを非表示/違反報告)
モブくん_通行人A(プロフ) - アッアッアッ無理ッッ好きッッッ (2021年10月29日 23時) (レス) @page50 id: f25d375883 (このIDを非表示/違反報告)
さき - いやぁ・・・!なんか、もうっ、すごいです!応援してます! (2021年10月29日 22時) (レス) @page50 id: d336e73bb4 (このIDを非表示/違反報告)
はしばみの揚げ物(プロフ) - モブくん_通行人Aさん» ありがとう、好ッッッ……(((( (2021年10月28日 6時) (レス) id: f8654c08a0 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:胃酸先生。 | 作成日時:2021年9月29日 16時