今の情けは後の仇。【日常組】 (ページ48)

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「え…何すか？」

チラリと8番さんと目が合うとすぐさま看守の注目を集めようとサッと看守の視線に入る8番さん。

「ウサギが逃げたみたいだな！」

「逃げてないっすよ！」

『………。』

看守は一瞬こちらを向いたあと直ぐに8番さんに視線を戻した。妙に違和感を感じる。

「まぁ、いい！まぁ、頑張ってるようなので6番が先日作った食料の追加差し入れだ！」

「お！昼飯だ〜！」

看守がそういうと次々に喜ぶ3人。私は素直に喜べないんだけれどな…。

「やった！差し入れだ〜！」

『…どうも。』

「まぁ、引き続き頑張ってくれ！」

そう言い看守は作業場を出ていった。…少し圧をかけすぎただろうか、看守にも8番さんにも殺気がバレてたみたいだ。

「いやぁ…俺はこのウサギをじゃあ、守り抜くわ！」

ぽわぽわと優しい笑みを浮かべながらウサギの後を追う8番さん。マジで近所の子供と遊ぶおじさんみたいだ。

『……、人間がみんなあんなだったらいいのに。』

ポロッとそう言葉を零す。8番さんを横目に見ながらぱぱっと作業を進める。

「………。」

「お、バカ！お前そっち行ったら！お前めっちゃ行くやん、こいつ！好奇心旺盛、こいつ！」

「スゴイね、好奇心旺盛！あ、めっちゃ行くやん！」

9番さんも8番さんの後を追い扉をくぐる。あなた達作業しなくていいのか…。

「めっちゃ行くやん！めっちゃ行くやん！めっちゃ行くやん！

めっちゃ行く！めっちゃ行く！こいつスゴイ！こいつスゴイ！」

隣の部屋から滅茶苦茶にはしゃぐ声が聞こえ、さすがに不味いんじゃないかと様子を見に行くと金のゲートまで走っていく8番さんとその後を続く9番さんと6番さん。

「待って、行かしてやろう！行かしてやろう！行きたいなら行け行け行け行け！お前がそこまで行きてぇんだったら！お前の好きなように生きろ！」

『…………。』

私も、意思もない生命力と本能だけで生きる動物だったら、彼らは私に同等の言葉を投げかけてくれるだろうか。

意思があるだけで、人間のような見た目と考え方をしているだけで、簡単に間が裂け始める。人間は人間を陥れる。それは実に簡単で、自分も堕ちるということを知らない奴らがそうやって簡単に他人を傷付ける。

それがどんなものであろうと関係ない。同等の人間であろうと、動物であろうと、獣人という人種であろうと。

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