胃袋を掴んでしまった、という話。【rbr】 (ページ14)

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じごくページ14

『……んﾞあ〜…、肩いった…。』

首をゴキゴキと鳴らしながら回す。ああ、マジでそろそろ死ぬ。
生きてる心地がしないもんな。

「丸田さん、書類終わった？」

『あ、はい。い、今終わりました。」

「少し遅いわね、もう少し早めに出来なかったのかしら？」

ああ、まただ。お局さんは今日も平常運転。
すいませんと頭を下げる。彼女は自分の頭を掴んで「腰から曲げるのよ！」と無理やり下げてくる。

『は…い、すい、ません。』

背が高いのも考えものだなと、内心嘆息する。
慣れてない人、というか、苦手な人とかはどうしても緊張して言葉が詰まってしまう。なんというか、気持ちが落ち着かなくて、というか。

周りからはもう同情の目は向けられることは無かった。入社してからは、周りも気遣ってくれたことは多くなったが、もう今となれば自分が一番可愛いのだろう。

「ああ、あと。今日仕事終わりにみんなで飲みに行くから、ちゃんと準備しとくのよ！」

『あ…はい、分かりました。』

今日は配信無理そうだなあ。休み時間の間にちゃんとツイートしとかなきゃ。

＿＿

とぼとぼと、帰り道を歩く。両眼からは、ぼろぼろと涙がこぼれ落ちていた。
酒癖は元々良くはなく、言うところの泣き上戸。もう地獄だった。

上司はセクハラパワハラモラハラしてくるし、後輩はベロベロに酔ってるから面倒見ないとダメだし、無理やり酒飲まされるし。もう正直死んでいた。

『…もーやだあ』

会社だって出勤時間より少し早くついてるのに遅いって注意されるし、定時には帰らせて貰えないし、残業代はおろか、給料だって安い。労働基準法どうなってんのマジで。

『…人生の生き方まちがえたなあ』

おぼつかない足取りでエレベーターに乗り、6階のボタンを押す。すぐに上がっていって、チーンと高い音が鳴った。
なんでかなあ、なんでこんなにもうまくいかないんだろう。頑張って勉強して、いい大学に入って、ちゃんと卒業もして。親孝行だってしたいって思ってるのに、自分のことばっかり精一杯で。

なんなのかな、本当に

部屋の鍵をカバンから取りだし、鍵口に鍵が差さらない。手元が覚束無いのか、何回もやっていても開く気がしない。目の前がぼやりと霞む。

どうしよう、明日だって仕事あるのに
頑張らないと、いけないのに

がちゃっと勝手に目の前の扉が開く

「ど、どうされました〜……あれ、丸田さん？」

『…天乃さん？』

彼が、扉から出てきた。