胃袋を掴んでしまった、という話。【rbr】 (ページ15)

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かんびょうページ15

「ど、どうされました？スーツ姿で…。」

『…あ…会社から、帰ってきて』

「ええっ！今もう零時過ぎてますよ！？あ…お酒飲んではるんですか？」

『…そ、です…。
あ…ちがう、部屋、まちがえましたね、すいません、夜中に』

部屋、ひとつ隣だったか。間違えちゃってた。
嫌だなあ、夜に、もしかしたら寝てたのかもしれない。天乃さんにだって仕事があるんだから、迷惑にならないようにしないとなのに。

『すいません、また、こんど』

くるりと横を向いて歩き出す、はずだった。
膝から崩れ落ちるような感覚。目の前に広がる、廊下の灰色。

意識が遠のく直前、彼の呼ぶ声が聞こえた気がした。

＿

朝日が、顔に当たっている感覚がする。眩しくて寝返りをうつ。しゃかしゃかとした布団の素材が、音を立てた。

…あれ？

自分のベッドって、こんなだったかな。掛け布団は毛布だし、自分は枕無しで(抱き枕はある)寝ることが多いのに、枕がある。

「あ、起きたぁ？」

優しい声が、キッチンの奥から聞こえた。
起き上がろうとすると、ずきんと頭が痛くなる。

『…あ、れ、天乃さん、わたし、なんで』

昨日の記憶を辿ろうとしても、なかなか思い出せない。たしか、会社の人達に付き合わされて飲みに行ったまでは覚えている。そこから、ほとんど意識のないゾンビ状態で帰ってきてたような。

「いやな？あんさん、昨日フラッフラでおってな、入る部屋も間違えてしもてたんで…。
倒れてまうやろなって思ってたら予想通り倒れてしまったから、とりあえず家で引き取ってって感じです。」

『…えﾞっ！う、うそ、あ、な、なんてご迷惑を…！』

どうしよう、迷惑をかけてしまった。頭痛で回らない頭をどうにか下げる。

「いやいやいや！あんなしんどそうにして放ったらかしなんて出来へんから！全然僕は迷惑なんてしてないんで…！大丈夫です！」

『え、えと、その、な、なにかお礼は…』

「しなくて平気です！丸田さんが病気される方が心配なんで…！」

すぐお粥作るんで！と笑顔でキッチンの方へと行ってしまう天乃さん。
見慣れない家具を眺めながら、ぼうっと考える。そういえば、昨日沢山飲んでたからな。酒癖悪いから、もしかしたら色々変なこと言ってるかもしれないな。

あ？そういえば仕事…。
え、やばいじゃん。え…うそ、仕事ぶっちして…、ス、スマホ…。