・ ページ3
湯気がたつカップと、可愛らしい柄の描かれたお皿にカステラを載せたAは、おぼんにそれらを載せ、カクが座っている所へと戻ってきた。転ばんようになと彼が以前注意したことがあるおかげか、今回は転ばなかったようで。
「では、ごゆっくり__」
「え。Aもおってくれるんじゃないんか?」
残念じゃのうと、明らか落ち込んだ雰囲気を彼が見せるので。内心苦笑しながらも、ではお隣失礼しますねとAはカクのすぐ隣の席へと座った。
「カクさんは好きですね、船の本は。」
微笑むAは、まさに無知であった。それは仕方のないことで、そしてそれをした人間は許されないということ。小さい頃から好きじゃと、子供じみた絵の書かれた大きな字を読む。__正直同じようなものだろと1度パウリーにそう言われたことがあったなと、カクはふと思い返した。
「私も船のことは好きです。構造とか諸々は…よく分かんないですけど。
とにかく好きです。」
やけに焦ったようにAがそういうので、つい彼が吹き出すと、えっ?と混乱したように彼を見た。
__変な思い出に浸っているのがばれたかの。内心苦笑しながら、カクは口を開いた。
「暇があれば、ガレーラカンパニーに来るか?
普段は立ち入り禁止じゃが…中の様子が見れん訳では無いしのう。Aが遊びに来た時はわしも嬉しいわい!」
「え、へっ?い、いいんですか?」
__本音は、少しでも彼女の心の隙間を埋められたら。なんていう無粋な考えだけど。
それでも彼女が喜ぶならと、カクはそう思った。Aの11年間は、色が褪せているから。
「ああ。だがまぁ、アイスバーグさんにちとお願いをせんとじゃがな。」
「うう、お願いしますアイスバーグさんー…。」
両の手を合わせるA。楽しみかと、カクが彼女にそう聞くと、はいと頷いた。
なら、自分からも頑張ってみんとなと、カクは内心でそう固く思った。
75人がお気に入り
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:はしばみ | 作成日時:2022年11月11日 0時