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湯気がたつカップと、可愛らしい柄の描かれたお皿にカステラを載せたAは、おぼんにそれらを載せ、カクが座っている所へと戻ってきた。転ばんようになと彼が以前注意したことがあるおかげか、今回は転ばなかったようで。

「では、ごゆっくり__」
「え。Aもおってくれるんじゃないんか?」

残念じゃのうと、明らか落ち込んだ雰囲気を彼が見せるので。内心苦笑しながらも、ではお隣失礼しますねとAはカクのすぐ隣の席へと座った。

「カクさんは好きですね、船の本は。」

微笑むAは、まさに無知であった。それは仕方のないことで、そしてそれをした人間は許されないということ。小さい頃から好きじゃと、子供じみた絵の書かれた大きな字を読む。__正直同じようなものだろと1度パウリーにそう言われたことがあったなと、カクはふと思い返した。

「私も船のことは好きです。構造とか諸々は…よく分かんないですけど。
とにかく好きです。」

やけに焦ったようにAがそういうので、つい彼が吹き出すと、えっ?と混乱したように彼を見た。
__変な思い出に浸っているのがばれたかの。内心苦笑しながら、カクは口を開いた。

「暇があれば、ガレーラカンパニーに来るか?
普段は立ち入り禁止じゃが…中の様子が見れん訳では無いしのう。Aが遊びに来た時はわしも嬉しいわい!」

「え、へっ?い、いいんですか?」

__本音は、少しでも彼女の心の隙間を埋められたら。なんていう無粋な考えだけど。
それでも彼女が喜ぶならと、カクはそう思った。Aの11年間は、色が褪せているから。

「ああ。だがまぁ、アイスバーグさんにちとお願いをせんとじゃがな。」

「うう、お願いしますアイスバーグさんー…。」

両の手を合わせるA。楽しみかと、カクが彼女にそう聞くと、はいと頷いた。

なら、自分からも頑張ってみんとなと、カクは内心でそう固く思った。

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作者名:はしばみ | 作成日時:2022年11月11日 0時

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