落ちた鬼灯。【OP】 (ページ20)

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３ブルーベリーワイン。ページ20

ガヤガヤ。ガヤガヤ。酒場はいつも以上に賑わっていた。
大半の理由はA目的が多かったが、その分店は繁盛し、その一角でカク達もその賑わいを楽しんでいた。

「今日はやけに混んでるのう。みんなA目的か。」

『そういうお前もA目当てだろう、ポッポー！』

Aは両手におぼんを持ち、ビールやらつまみやらを運んでいる。白いブラウスにはよく似合うエプロンを着け、おさげは解きひとつに結んでいる。

「Aちゃん！こっち注文いいか！」

「あ、はい！ただいま。」

一応BARのつもりだろと、パウリーは喉へと酒を流し込む。あんまりこき使ってあげないでよとカリファは足を組み直した。

「ああ。あんまり張り切りすぎないようにとも伝えてある。」

「…まあ、あんなに期待されとったら、ああなるのも無理はない。」

＿＿しかしまあと、カクは内心呆れていた。体が弱いというのに、周りばかりに気を使って働いて、いつ壊れてもおかしくないというのに。言わば船の竜骨がダメになっている状態。健気の度を越しとるなと、カクはグラスの氷を覗き込んだ。カウンター席のライトに照らされ、光っている。

「はァ！？何してんだおめェ！」

呆れにも近い、怒号が響いた。ふと振り返ると、Aの頭の上に＿＿酒瓶。ぽたぽたと、髪を伝い、服を伝い、床に酒が落ちていく。頭から、酒を掛けられていた。

今まで、今の今まで、騒いでいた酒場が、一気に静まる。冷える。絶対零度まで。
白いブラウスが肌に張り付く。掛けていた男は、ニヤリと笑った。＿＿昼間に会った、男だった。

ブルーノが拭いていたコップを落とす。かしゃんと音を立てて割れる。

「ぎゃはははは！！満足かぁ！？満足かって聞いてんだよA！！」

「……。」

Aの背中をカク達は眺めていた。何も言わず、呆然と立ち尽くす彼女が、どんな表情をしているのかも分からずに。