・ ページ19
声をかけられた方に、Aは向いた。茶髪の男2人。
黒の瞳が、嫌にぎらついているように見えて、Aはたじろいだ。
「あ、え、…い、いえ…。近くに、知り合いが…。」
「えーそうなの？なら待ちの時間にさ、俺達と遊ばない？」
「そーそー！待ってても暇でしょ？」
困惑した表情を浮かべ、Aは2人を見た。A自体、容姿も愛想も良かった為、街では人気のある女の1人であった。その為か、よくナンパには遭うもので。
「あ、で…も、待っとかないと、困らせちゃうし…。」
「いーじゃんいーじゃん！さ、早く行こう！」
きゃっと、Aが小さく悲鳴を漏らした。いきなり腕を捕まれ引っ張られたものだから、足元がぐらついてよろめく。＿＿そこに、影が落ちた。
「＿＿俺の連れに、何か用か。」
立ち止まった男達は、Aの後ろを見上げている。ひゅっ。男達が喉を鳴らした。
酒場のブルーノ。その瞳は鋭く男達を睨んでいる。Aや男達に比べ巨体なその体は威圧的そのもので。
すいませんでしたァ！と走って逃げていく男達を、2人は眺めていた。
「＿あ、ブルーノ、さん。」
一瞬戸惑ったように後ろを振り返り、Aはその名を呼んだ。＿＿彼女を1人にしなければよかった。そう内心思いながら、ドーナツが入った袋をブルーノは手渡した。
「いい店が見つかった。食べ歩きながらでも酒場に戻ろうか。」
「…！そう、ですね。」
微笑んだAとは対照に、ブルーノは心に影を落とした。＿＿暗殺というものは、酷く暗く潰しの効かないものだと。この子の笑顔を奪い、世界の平和となるのなら……それでも、正しいとは、俺は言えるのか。
「ブルーノさん？早く行きましょう。」
「…ああ。」
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 75人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：はしばみ | 作成日時：2022年11月11日 0時
