落ちた鬼灯。【OP】 (ページ1)

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１珈琲お入れいたします。ページ1

生きるのは、困難だ。死ぬことよりもっと。
女は夜の街を、なるべく音を立てずに駆け抜けていた。色々な屋根を伝いながら、こちらを追ってくる人物を撒こうと。

「(しつこい奴だな。)」

女は呆れながらにため息をついた。

＿＿なぜ、こうなったか。理由は明白。
女が、殺人を見てしまったから。腹部を切り裂かれ、男か女か分からない生き物は血に伏している。ゆらりと影より暗い黒が、奥に揺らいだ。＿次は、自身の番だと、そう思った。

しかしながら。

「(男はしつこいものだな。)」

嫌な記憶が唸る。カツンと高く、そして硬い音が鳴ったと後ろを振り返れば、全身を黒で纏った男が立っている。互いに睨み合う中、男は片手にまとめて持っていた長ドスを両手へと構えた。

「止まれ」

「＿＿＿っ」

男が息を吸う。固まった表情と体は、月明かりに照らされ、鮮明に見える。
＿＿ああ、厄介な相手に目ェ付けられたもんだ。粗方黒ずくめとなると、(民間人を殺しているかは知らないが)、海軍。いやそれより上の、政府の人間だろうか。

サイファーポール？だがその中で殺人を許可された組織など無いはずだ。

「＿っ殺ら、んのか」

やっとのことというように、男がか細い声をあげそう言う。四角くて、長い鼻の男。
＿＿造船所のカクか？たしか一番ドックの大工職長のはずだが。なにかの潜入か？それにしてももう少し変装の施しようがあるだろうに。それじゃあ服を変えただけだ。

『死にたいのであれば殺しても構わない』

「ははっ…わしは、命を握られとる側か…。」

紙へとそう書くと、乾いた笑いをそう浮かべた男。
それと同時に、男の腹へと拳を深くいれた。