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がちゃりと、医者が扉を開けた。＿＿翌日の事だった。
頭痛が酷い中、Aは治療室の前の椅子に鎮座し、じっと待っていた。その翡翠色の下には、隈が。
「応急処置はした。傷も塞いだが…覚悟はしといた方がいい。」
「……そ、んな…、お、お金はいくらでも出します。な、何億だって構いません…だから…！」
「Aちゃん。」
酷く、辛い表情をAは浮かべた。カクは腕を組んだまま、立ち上がり抗議するAを見上げた。
「Aちゃんも分かっているだろう。君の持病が直ぐに治らないのと同じように、我々は全部を救えるわけじゃない…！酷なことを言うようだが、それが現実だ。…すまんが、分かってくれ…。」
そんな、と言葉を零してAは目眩のように椅子へと座り込んだ。歩き去っていく医者の背中を、カクは目で置いながら待つしかないと呟いた。
「…私の、せいです」
「……なんでじゃ。お前が刺したわけじゃなかろう？」
独り言のように呟いたAの言葉に、カクは耳を傾けた。
「…幼い頃から、不運をよく招くような子供でした。だから…父が死んだ後、母までもが海賊に殺され死に、町は滅んで…こうやって、カームさんまで…迷惑を…。」
「何を言うか。なにもお前が全部悪いわけじゃなかろう。全部の責任を背負おうとするな＿＿」
＿＿ならなんで！
悲痛な声が、廊下に響き渡った。
「どうして…！どうして、みんな死んでいってしまうの…、なんで…私だけが生き残るの…。」
ぼたぼたぼた。ああ、涙が止まらない。
「私が、代わりに死ねば良かったんです！あの時、海賊に町が襲われた時に、一緒に、死んじゃえば＿＿」
「＿＿そんなことを言うな！」
カクはAの胸ぐらを掴んだ。小さく悲鳴を漏らした彼女に目もくれず、ばたんと椅子へと押し倒す。
Galleyと書かれた帽子の下からは、怒りが滲んだ瞳が見えた。
「わしもルッチも、ガレーラの奴らも！お前に死んで欲しくて助けたわけじゃないぞ！！」
ひく、ひっくと、嗚咽が響く。
＿＿なら、どうすればよかったの。Aがそう呟く。ぼたぼたと、頬に涙が伝う。
「わたしを、おいていかないで…」
泣きじゃくるAの頬に伝った雫を、カクは静かに掬った。
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作者名：はしばみ | 作成日時：2022年11月11日 0時
