宇宙大元帥に関する覚え書

🍋🌑🌃🚀 ページ39

＜執筆者不明の頁＞


梶井基次郎。
私の補佐官であり、私の知る限りでは最も科学者らしい男。

彼は今、私の宇宙船の製造を行っている。


「A閣下、この部品、どうやったら設計図通りに接合できるんですか？」


「此処は普通にこうしてこう……あ、地球上ではできんな、コレ」


「設計ミス！？」


「ち、ちが……わないけれども！失敗もまた貴重な標本(サンプル)なのだ！地球では不可能な行動が一つ判明したのだぞ！」


そう、生物は失敗で成長するものだ！これは疑ってはならない！
基次郎が頑張ってくれている。私も設計図の修正に取り掛かろう。



……そういえば、此の部屋の事で、気になることがある。
何故空き部屋が放置されていたのだろう？
先刻、基次郎と共に街を歩いた時、大勢の人間を見かけた。一都市にあれだけの人間が居れば、住居も当然必要になってくる。なのに何故空き部屋が？

それぞれの星に、それぞれの事情があるのだろう。
……しかし、「それぞれの事情」で片付かない問題もある。
此の部屋に入って来た時、ほんの僅かに生物の血液の匂いがした。人間には気付かない程度の匂いだ。基次郎が気付いていないのだから、たぶんそうだ。

――まさか、な。


「A、何ぽーっとしてるの？」


「ん？ああ、いかんいかん。作業に取り掛からねば！」


私は製図用紙にペンを走らせる。
さて、今ある材料と地球の環境で制作可能なのは……


「ところでさ」


「どうした？」


「三段構造なのは良いけど、此処をガムテープでくっつけるって云うのは……」


「無理ではない！物は試しだ！」


「それは『無謀』って云わない？」


「云わない！」

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