宇宙大元帥に関する覚え書

100110 ページ38

「宇宙大元帥執務室地球分所兼梶井科学研究所」とA閣下に名付けられた部屋。
その実態は廃ビルの一室だと、名前を聞いただけで判る奴は居ないだろう。


「基次郎、準備はできたぞ！」


当の命名者は、机の上に設計図を広げている。
僕が買ってきた材料や、僕の私物も机の横に並べられていた。


「見ろ、此れが我が発明『打上げ機(ローンチヴィーグル)セイリオス号Mark-2』の設計図だ！」



「お、ちゃんとそれっぽい形だ」


太陽神(アポロ)の系譜を継ぐ三段式。
ちゃんと日本語で書いてある。読みにくいけど、其処は我慢だ。
一つ、気になるのが……


「燃料が、梶井基次郎と共同開発するって……何？」


「うむ、それはだな。私が見てきた資料の応用で、ロケットの構造は作れたのだ。しかし、天体間飛行できるだけの熱量(エネルギー)を生み出す燃料がなかなかない。そこで、爆弾作りに精通したお前と、共同開発するのだ！」


「成程……」


爆弾とロケット燃料は大きく異なるものだ。
爆弾は、一瞬の火力にかけるモノ。ロケット燃料は、最小限の質量と体積で、最大限の熱量を安定して長時間発生させられるようにするモノ。
……少々、荷が重い気がする。


「やれるかを疑うな。やれないを疑え！」


「名言っぽい」


「私の伝記を作るときは、この台詞を入れて良いのだぞ？」


「僕は伝記は書かないから」


A閣下が少し落ち込んだ。

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