職業：女優１０

・ ページ20

「ホンマあの時付き合ってなくてよかったわ」


「それいっつも言うけど、本人の前やで？」


「本人の前やから言えるんやろ。おらんところで言ったら悪口やんけ」


「そーですか」


「お前やって俺と付き合わんでよかったやろ？」


「うん」


「即答するな」


「まーくんが言い出したんやん」


「まぁどうせ俺ら付き合っても、遅かれ早かれ別れてたやろうしな」


「そんな気するわ」



多分。
いや、きっと私達は上手くいかなかったと思う。
そんな気がする。
どうして？と聞かれたら、明確な答えは出せないんだけど。



「せやろ？ 俺とAはこれくらいの感じが丁度ええんやって」


「わかる。友達以上恋人未満的な？」


「そうそう。それにもし付き合って別れてたら、共演のときに気まずい」


「まーくんとは共演多いしなぁ」


「別れた後にキスシーンとか嫌やわ」


「うわ、それ絶対嫌！」



元カレとキスシーンとか死んでもやりたくない！
そう考えたら芸能人と付き合うのって大変だなー。
よかった、今まで芸能人と付き合ってこなくて。



「そう思ったら今の方が気楽でえぇわ」


「わからんでもないけどさぁ、そんなんやから彼女出来ひんのんちゃう？」


「作らんだけや」


「負け惜しみ」


「うるさいわ」


「はいはい、失礼しましたー」


「口の減らんヤツやなぁ」


「昔からですぅ」


「知ってますぅ」


「うわ、面倒臭い」



こうやってポンポン言い合いできるのも、この関係でいられるまーくだからで。
そう考えると、本当にこの人はありがたい存在だなぁ。



「……なぁ、A」


「うん？」



呼ばれて顔を見上げると、真剣な表情をしたまーくんと目が合った。



「お亮に幸せにしてもらえよ？」


「何で亮ちゃん限定？(笑)」


「だってそうやろ？」


「んー……」



ここで「うん」と頷いていいものか。
返事に悩んでいると



「まぁお前が幸せになるなら誰でもええから。その時は教えろよ」



と繋ぐ手に少しだけ力を込めたまーくん。



「……そうなったらな」



そのときはまーくんに１番に言うよ。
そう心の中で呟いて、手をぎゅっと握り返した。

違和感と胸騒ぎ＊注意書き有→←・

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す