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「……あ」
あれから何度目かのノー残業デー。
定時で仕事を終わらせてエレベーターでエントランスまで降りると、別のエレベーターで降りてきた吉沢さんと鉢合わせた。
ばっちり目が合ってしまって、逸らすに逸らせなくて。
気まずそうに会釈して、足早に立ち去ろうとする吉沢さん。
「吉沢さん」
ここで逃がしてはダメだと彼の背中に声をかければ、一瞬びくっとして立ち止まる彼の足。
「ちょっといいですか?」
「……はい」
「お話があります。この後お時間いただけませんか?」
「……わかりました」
久々に彼と並んで歩く。
ヒールの私に歩幅を合わせてくれるのも、車道側を歩いてくれるのも変わっていない。
変わったのは、お互い何も話さないという事だけ。
駅の近くの個室のある店に入って、飲み物が運ばれてきたタイミングで吉沢さんがやっと口を開く。
「あの」
「はい」
「話って、なんですか?」
怯えたような、悲しいような、そんな表情。
まるで捨てられた子犬のような。
あぁ、そんな顔しないで。
「誤解を解いておこうと思いまして」
「……誤解?」
「吉沢さん、勘違いされているようなので」
「どういうことですか?」
大きな瞳が私を真っ直ぐ見ていて、でも少しだけ不安に揺れているような気がして。
きちんと話さないと、と思った。
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リオ(プロフ) - ねのさん» ねのさん、コメントありがとうございます。吉沢Sideも公開できるように頑張ります。 (2018年10月21日 19時) (レス) id: 17091ee08c (このIDを非表示/違反報告)
ねの(プロフ) - 完結おめでとうございます!ぜひ、別side編も読んでみたいです (2018年10月21日 1時) (レス) id: 9139ef9cf8 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:リオ | 作成日時:2018年10月14日 15時