稲荷の狐と夜叉の花姫2【まふまふ】 (ページ23)

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66話ページ23

ボロッとあやかしの姿が崩れると、中から人形が出てきた。刀を収めてそれを拾う

坂「いやー、何度見ても別人やなぁ」

ひょこひょこと別の人形を持って現れたのは、今日も赤髪が特徴的な坂田さんだった。探知が得意なまふまふさんと違って、坂田さんは戦闘系である

もちろん私も鬼化した今は戦闘系なので、彼とは分かれて行動することも多かった

坂「鬼化の影響で、戦う時に身体能力が底上げされるんやっけ？いつものAとは大違いやで」

貴「ちょっと待ってください。いつもの私がどんくさいって言われてるみたいなんですけど」

坂「あ、バレた？」

貴「坂田さん！」

ごめん許してーと笑いながら逃げ回る。絶対ごめんって思ってないけど、彼とのかけ合いは悪くなかった。どちらかと言うと、まふまふさんの発言の方が精神に来るくらいだ

しかし、だいぶここの人達とも打ち解けることが出来たと思う。それに最近、茶店のお姉さんがオマケしてくれるようになった

神たるもの、俗世に触れすぎてはならないと思う反面、浮世を知らなければならないとも思う

人やあやかしを知るなら、その生活を知らなければならない。だからこれも仕事。そう、立派な仕事なのだ

坂「顔にやけとんでA」

貴「えっ！」

坂「一昨日食べたばっかやん！そんなんじゃお腹にお肉ついちゃうで」

貴「なっ、なぜそれを！？」

言ってしまってから慌てて口を塞ぐ。なぜか最近、以前より肉付きがよくなってしまっている

誰にも言ってないのに、なぜこの人が……

坂「え、甘いものって太りやすいで。知らんかった？」

何気ない言葉が、私の全身を雷のように貫いた。思わず四つん這いの姿勢をとってしまう

坂「え、ホンマに知らんかった？……えーと、ごめんな！でも元々A細いし、女の子は少しふっくらしてる方が可愛いらしいで！な？」

善意しかない言葉がグサグサと突き刺さる。正直やめてほしい、いろいろ痛い

密かに甘いものを減らす(断つまでは出来なかった)決意を固め、なんとか立ち上がる

貴「……ありがとうございます」

坂「大丈夫……？じゃ、じゃあちょっと一緒に減量しようや、俺も最近お肉ついてきたし」

その細身な身体のどこに肉があるのかお尋ねしたいところだが、気遣いを無下にはしない。大丈夫。大丈夫

坂「そんで達成出来たら、秋祭りでいっぱい食べよ！」

＿＿＿秋祭り

これがつかの間の平穏を脅かすものになるとは、誰も知らない秋の午後だった