66話 ページ22
朝食後は、帳簿の整理
この神社は、市役所のような仕事も担っている。民のためを思うなら、祈るだけではいられない
機密の仕事は俺とまふだが、それ以外は二人にも手伝ってもらったりしている。坂田は苦手らしいけど
坂「そらるさーん！見回り行ってきます！」
そ「お前、少しは嬉しそうな顔隠せよ……」
しかし、2週間前から始まった合同調査によってそれは無くなった。今日は坂田とAが見回りに出る
まふも出ることはあるけど、書類仕事に追われる身としては残ってくれた方が嬉しい
そんな事情もあり、基本はまふが居残りだ。今日もその日のうちの一つである
ま「そらるさん、こっちの計算終わりました」
そ「助かる。次は新規入居者の方を……」
ま「はい。あー……出雲から文が届いてますよ」
そ「主が居ないんじゃ出席の仕様がない……それに裏があるとしか思えない」
名だたる神々が集まる中で、妖怪あがりの神を呼ぶ意味などない。恥をかかせるためか、うちの里に文句でもつけるためだろう
ここは一時的とはいえ、霊やあやかしの移動を止めている場所だ。人口増加で霊が増えすぎて、あの世がパンクしそうだという話も聞く
だからここを自分たちで治めたいとのことだろうが……
ま「主たちが頑張って作ったものに、どんな変な改造されるかわかんないですからね……ここに里を作ったのは、人口増加で余った人たちを隔離するためじゃねーよ」
そ「口が悪いぞ。まぁわかるけど」
あくまで想いを消化できないモノたちのために創られた場所だ。その理念を理解できない神々に渡す気は毛頭ない
そ「断りの文書かなきゃな。まふ、そこの紙とって」
ま「はいはい、ここですかね？なんか物の置き場所変わったような……わぁっ！？」
ドザザッと大きな音がして、慌てて振り返る。案の定、様々な書類が床に散らばっていた
そ「お前……大丈夫？」
ま「す、すみません……というか書類溜めすぎですよ！なんですかこの量！」
そ「悪いな、誰かさんがいない分の穴埋めが追いつかなかったんだ」
ま「うっ……」
散らばった書類をまふと片付ける。味気のない藁半紙の中に、一枚だけカラフルな用紙が現れた。まふがそれを手に取る
ま「今年も……こんな時期でしたか」
そ「そうだな。この前やったばっかな気がするのに」
おじいちゃんっぽいです、と笑うまふの肩を小突く。確かに最近、身体にガタが来始めてるけど
ま「……楽しみですね」
そ「ああ、そうだな」
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作者名：笹乃葉 | 作成日時：2023年7月5日 18時
