稲荷の狐と夜叉の花姫2【まふまふ】 (ページ18)

今日:6 hit、昨日:8 hit、合計:2,105 hit

62話ページ18

貴「美味しい！」

歓声にも近い声色で、笠を被る少女が三色団子をかじる。この前も来たのに、よく飽きないものだと思った

貴「まふまふさんもいかがですか？このお団子、すごく美味しいですよ！」

ま「いやボクはいい……」

個数が少ないので、一つ一つをとても大事そうに咀嚼している。そんな人の皿から奪う趣味は持っていない

というか支払いボクだし

坂「もぐもぐ……なるほど、お詫びに1回奢ったら予想外に喜んでしまったんやな」

ま「そういうこと……ってちょっと坂田。財布持ってる？」

坂「ごちそうさまです！」

ま「せめて一言いってからにしろ！」

はぁとため息をついて、銭袋の中身を確認する。経費で落としてやろうかな

坂「でも意外やわ」

Aが茶店のお姉さんに(なぜか)追加の団子を受け取っている時、彼女に聞こえない声量でぼそりと呟く

坂「まふは律儀やけど、ここまで面倒見がいいとは思ってへんかったな」

ま「いろいろ迷惑かけたし……それに、あんな目で見られたら連れてくしかないでしょ」

タヌキの里の帰りに、疲れ果てていたAを休めるためにも茶店に寄った事がきっかけだった。お詫びも兼ねて、という1回限りのものだった

……それが良くなかったのかもしれない

うらたさんのところで甘い汁を(文字通りの意味で)吸ってしまった彼女は、甘味が無いと生きていけない身体になってしまった

うらたさんの屋敷に比べてウチは甘味が豊富な方ではなく、出ても干し柿とかだ

表面上では口に出さないが、彼女としては若い娘が好みそうな菓子も食したいらしい。連れていった茶店を大層気に入り、週に1度という約束で連れてくることになってしまった

そのことを話すと、坂田が面白そうにけらけら笑った

坂「まふの奢りで？なかなか肝据わっとるなぁ」

ま「お金持ってないからね。金銭感覚も狂ってるから下手に財布持たせらんない」

坂「にしてもよう素直に言うこと聞いたな。弱みでも握られたん？」

ま「そういうことじゃないけど……調査手伝ってもらってるし、なんのお礼もしないのはどうかなって」

店の奥に目をやると、さっき団子を持ってきたお姉さんが叱られていた。独断のサービスだったようだ

Aは幸せそうに団子を食べている。知らないのは平和だな