稲荷の狐と夜叉の花姫2【まふまふ】 (ページ17)

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61話ページ17

気の流れが蠢いている。その中でも最も強く光る一筋に集中して術を放った

ギャァァァァァ！！！

耳障りな声で獰猛な獣が叫ぶ。そのままボクから離れて遠くへ逃げようとした

ま「坂田、そっち行ったよ」

坂「はいっ！」

元気な声で返事をするのは、赤い髪の元気な少年。狙いを定めて、手に持った大鎌を振る

次は悲鳴をあげる暇もなく、獣は灰になって消えていく。坂田は慣れた様子で、ゴソゴソと灰の中から小さな木工人形を取り出した

坂「はい。今でいくつー？」

ま「んー……5個め。そろそろ戻ろっか」

坂「了解。今日もお疲れさんやで」

ボクが戻ってきて三週間。だんだんあやかしを討伐するのも慣れてきた

慣れてきた、といえば語弊がある。魂の抜けた依代は、元のあやかしの姿を保持することが多い

つまりは見知った顔も多い。意思疎通の出来ない知り合いを、自分が手にかける……相当な苦行だ

だから最初はどうしても手を下せなかった。今も、決定的なトドメは坂田やAに任せてしまっている

ボクら神使が戦闘より、探知や術に長けているという理由もあるけど

ま「そんなこと言ってらんないんだけどな……」

独り言のつもりで呟くと、少し先を歩く坂田が振り返った。獣系の妖は耳がいい

坂「まふ、体力ないもんな。疲れた？」

ま「失礼な、あるよちゃんと」

坂「えー、だって俺の方が動いとるのに、息切れしとんのはまふやで」

ま「体力おばけと一緒にしないでくれる！？」

けらけらと屈託のない笑顔でディスってくる。和ませようとしてくれるのはありがたいけど、貧弱と言われるのも少し傷つく

最近はAもこのネタでいじってくるようになった。言っとくけどあいつ程じゃない

坂「なーなー」

いつの間にか、隣に並んだ坂田がまた話しかけてきた。今日はよく喋るなと思いつつ返事をする

坂「Aのことどう思っとるん？」

ま「……は？」

それはどういう意図だと問う前に、坂田がぺらぺらと喋り出す

最近Aと喋るとまふの話題が多いとか、まふもAの話題が多いとか

坂「あとさ、Aと対面するとまふが険悪なのなんで？Aは結構友好的やねん
初っ端無礼働いたのまふやし、普通逆な気するんやけど」

初っ端の無礼とは、街中でAを変な鬼扱いしたことだ。実はそれ以降にもいろいろやらかしているが、坂田は知らない

が、Aが友好的になったのは理由がある

ま「……いいよ、今日は坂田も行こう。すぐわかるから」