稲荷の狐と夜叉の花姫2【まふまふ】 (ページ14)

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58話ページ14

大きな猫のような動物は、そのまま私に真っ直ぐ突進してくる。ボロボロなのに、なぜか速度は異様に速い

受けきれない＿＿＿そう悟って、後ろのまふまふさんを突き飛ばした

「ちょ！？」という声が聞こえてくるけど、緊急事態なので目をつぶっていて欲しい

気が逸れたのか爪の攻撃は直撃することなく、押されつつも受け流すことに成功する。しかし、相手の図体は普通の猫と違って、見上げるほどに巨大だ

正直、手持ちの小刀だけではこちらが圧倒的に不利……

ふと、鼻をくすぐる香りを捉えた。そこでピンと閃く

先程までまふまふさんが探っていた土を見る。攻撃を避ける際に、いくつか摘み取る。それを＿＿＿

貴「まふまふさんっ、これ持って逃げてください！」

ま「急に何！？てかこれ……うわあぁぁぁぁ！！！」

思った通り化け猫はそっちに反応した。ドドドと地響きを鳴らして走る猫の背中に飛び移り、小刀を構え直す

貴方の罪はわからない。ただ……もう

貴「＿＿＿どうか、安らかに」

小刀を勢いよく突き立てた途端、断末魔と共に化け猫の身体がみるみる細かい砂になって消えていく

どこか悲しそうに。どこか解き放たれるように

全ての砂が大気に消えると同時に、一筋の雫が頬を伝った

＊＊＊

坂「そらるさーん、助けてぇ……」

そ「さっきも手伝ったろ」

坂「もー無理ぃ……」

書物から視線を上げ、俺よりだいぶ少ない量の書類を受け取る。さほど難しくないと思うのだが、坂田にはキツかったか

馬鹿にしてる訳じゃない。ただ定型文の言い回しなどは、まともに手習いをしてきた者でも躓く。

あやかしとして生きてきて、満足に教育を受けられなかった坂田だ。今まで終わらせた分だけでも上出来だろう

坂「なーなー、そらるさん」

トントンと書類をまとめていると、坂田が声をかけてきた。振り返らずに「なに？」と返す

坂「ここ来るとさ、自動的に実体のある身体が貰えるやん」

そ「ヒトガタのこと？魂だけだと触れないしな」

坂「そーそー。それって、魂だけ消えたらどーなる？成仏とか」

そ「俺たちがその容れ物を回収して浄化する。魂が抜けたら、顔も何も無い人形に戻るしね。そして次に来た人の身体になる」

坂「へー。それさぁ、浄化されんかったらどうなる？」

そ「んー……未練だけがここを彷徨うことになる、のかもな。俺は見たことないけど」