稲荷の狐と夜叉の花姫2【まふまふ】 (ページ12)

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56話ページ12

貴「いらしていたんですね。すぐに気付けず、申し訳ありません」

ピシリと三指をついて頭を垂れる姿は、角が生えていてもさすが神の一柱といったところか。……先程の一件がなければ

巻き込んだことを謝ろうと思っていたけど、なんだかその必要が無い気がしてきた

目が合っても自然に逸らされてしまい、まだわだかまりが解けていないことを悟る。やばい、機を失った……いつ謝ろう

う「はいはい、とりあえずさっさと話し合いしましょーぜ。時間は有限だ」

微妙な空気を察してくれたのか、それとも本当に急いでいるのか、うらたさんが提案してくれる。話し合いになると、一応他所から来たAに聞かれる訳にはいかないので、退室してもらった

人払いも済ませ、完全に2人きりになる。あ、変な意味ではなくてね？

すっと息を吸って、用意していた言葉を言う

ま「先日は、大変申し訳ありませんでした。神使でありながら、よその里に多大なるご迷惑を……」

う「言うと思ったぜ。でも俺だってお前が本気でやばい時でなきゃ手は貸さないぞ」

それは優しさだけでなく、当時のボクの危うさも示唆している。そうだろうと自分でも思った

あのまま一人でいたら＿＿＿何をしていたかわからない

実際、一度命を捨てかけたし今でも自分が消えれば良かったと思っている。今はその時でないと誤魔化しているだけで

そのことを少し話すと、「だろうな」と肩を竦めた

う「見た目に反して頑固だよな。そのお前が意見を覆すなんて、珍しいこともあったもんだ」

そう言って襖の向こうを見た。さっきAが出ていったところだ

ま「あいつだけじゃありません。ただ……言われたんです」

『助けるための、覚悟が』

ボクを説得するためでもない。ましてや持ち上げるためでもない、彼女の中で生まれた言葉

その真っ直ぐな言葉に貫かれて＿＿＿＿自分の弱さを思い知った

誰のためでもなかった。ボクはボクのために、あの子を救おうとしていたのだと

そしてきっと、あの子にとってそれは『救い』ではないのだと

一通り聞くと、「へぇ」と面白そうに瞳を細めた

う「やっぱ面白い姫様だな。いや、今は鬼姫って呼ぶべきか？」

ま「ストレートに呼ぶのは怒られますよ……A、でいいと思います」

う「普通はそっちのが怒られんだけどな」

その後は話し合いが始まり、今後の対策や協力体制について議論する。そらるさんからの言伝、意見なども交え、夜が更けていった