55話 ページ11
ま「……入りづらい」
この前自分から出てった、というのもある。しかし都合のいいことに、屋敷の大半の人はそれを知らない
これはうらたさんの案である。キツネとタヌキの仲が悪いことは周知の事実だ。そのため面倒なことにならないように、ボクを奥座敷にやり、ごく少数の者以外に事実を伏せた
当時はいろいろ余裕がなかったけど、改めて迷惑をかけたと思う
お詫びの機会としてもちょうど良かったかもしれない。門番に声をかけ、座敷へと繋いでもらう
キツネの使いとして来ているため、やはり少々居心地が悪い
彼女は……やはり心細いだろうか
今回は完全に巻き込んでしまった。全てがボクのせいではないけど、やはりきちんと謝ろう
そう考え、襖を開けてもらう……それと同時に、再度閉めてもらいたくなった
貴「美味しいです!これはなんですか?さっきのふわふわトロトロとは違います!」
渉「それはショートケーキ。さっきのはシュークリームだね」
貴「これが……!あのっ、本では知っていたのですが、ふぁへるのふぁひめ……」
渉「うん。食べてから喋ろうな」
女給「よろしければ、こちらもどうぞ」
貴「わぁ……!いいのですか!?」
渉「ちょっと待って?それ俺の分じゃない?ねぇ??」
……
………え?
何これ。確かボク呼び出された側なんですが
え、なんでパラダイス開催してんの???
襖を開けてくれたお姉さんも唖然と……してなかった
小動物でも眺めてるみたいに、目尻が下がっている。うらたさんのところから奪い取ってAにおやつを与えるお姉さんと同じ目だ……
短時間で何したのこの姫様
すると、ようやくうらたさんが「お」と気がついて手招きしてくれる
う「よ。家出息子」
ま「その節は……すみません」
じろじろ見たあと、軽く「仕方ねぇな」と流してくれる。面倒みのいい人だ
ま「あの、なんですか。この状況」
う「うん。俺にもわからない…」
珍しく困った表情でボクに説明してくれたところによると、里の問題によその神様を巻き込んでしまった、というお詫びでお菓子を上げたらしい
そしたらめちゃめちゃ喜んでしまい、さらに美味しそうに食べるさまが女性陣にウケたそうだ……訳が分からない
う「俺も予想外でどうしよ状態なんだけど。どうすればいい?」
ま「いやボクに聞かないでください」
結局皿が空になるまで、洋菓子のパラダイスは続いたそうだ。後で請求来たらどうしよう、と思いながら水をすすった
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作者名:笹乃葉 | 作成日時:2023年7月5日 18時