9-14 side:K ページ41
9-14 side:K
ぼんやりと現実と夢の間を行ったり来たりするような感覚を覚えていた。俺の前に現れたのは、穏やかな笑みで微笑む天使と、少し何かを企んだような笑みを浮かべる小悪魔。次の瞬間、俺は天使の腕の中にしっかりと抱き込まれ、全身でその熱を受け止めていた。
“・・・ミツはもう俺だけの天使だよ・・・”
甘くて優しくて、本当に俺のことを想ってくれている天使の――玉の言葉に蕩けてしまいそうになりながら、俺の視線は必死で小悪魔――藤ヶ谷の姿を追っていた。玉が俺に溺れている様子に満足そうに微笑み、どこかへ行ってしまいそうになるその背中に、必死で手を伸ばし、その背の黒い羽根を掴んだ感覚を得た瞬間に、俺の口からは本音が零れ落ちる。
――玉に愛してもらうから・・・だから、愛して欲しいの、藤ヶ谷・・・！
その言葉を告げた瞬間に、急に光が瞳の中に飛び込んできて――俺は意識を飛ばしていたことを理解した。
「んっ・・・えっ・・・宮田・・・？」
「あっ、起きちゃった？」
おはよー、と微笑むその姿は、藤ヶ谷でも玉でもなく宮田だった。瞳を開いた瞬間に見た宮田の表情は、いつものようなにこやかなものではなく、厭らしい表情をしていたような気もするが、気のせいだったのかもしれない。ベッドに横たわったまま頭を何度も優しく撫でられて、俺は思わずそのまま夢の中へ戻ってしまいそうになるが――
「俺・・・えっ、やだっ・・・！」
自分が全裸であることにハッとして、俺は慌てて毛布に手を伸ばして自分の身体を隠す。玉に抱かれていたはずなのに、どうしてここに宮田がいるのかよく分からず思わず身を震わせてしまう。
「違っ、キタミツ、俺は、その身体を綺麗にしてあげていただけで・・・！」
両手を振って何もしていないと慌てふためいてアピールをする宮田を後目に、俺は何度も周りをキョロキョロしてしまう。
「・・・玉は？」
「ミツ、目が覚めたんだね」
Yシャツをラフに羽織った姿で少しだけ濡髪の玉の姿に、思わずときめいてしまう。先ほどまでその美しい肉体と抱き合っていたのだ――それが現実であることを思い出させてくれるかのように、玉は俺に覆いかぶさり、唇を重ねてくる。玉の背中に腕を回して、甘くて優しい唇にうっとりしていると、その背後で顔を真っ赤にしている宮田の姿が目に留まり、俺は目を丸くしてしまった。
「玉、ダメ・・・宮田が見て・・・」
「気にしなくていい・・・可愛いよ、ミツ」
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作者名：ほわわ
| 作成日時：2020年3月9日 0時
