9-1 side:K ページ28
9-1 side:K
「玉・・・」
「部屋に移動しようか」
「・・・うん」
手をギュッと握られて、俺が反射的に身を強張らせてしまったのが伝わったのだろう――玉が優しく俺の手を撫でる。
「そんなに震えなくても・・・今日は優しくするから」
気持ちよくもしてあげるし、と掬いあげられた手に玉の唇がチュッと触れる。ついにこの時が来てしまったのだ、と玉の腕に寄り添いながら、最初から分かっていたことのはずなのに鼓動の高鳴りを抑えられない。
「最上階の一番いい部屋を用意させたから」
楽しみにしてて、とエレベーターに乗っている間も、玉の腕が何度も俺の身体に絡み撫でまわされて――笑顔で応えながらも、何度も決意をしたはずなのに、藤ヶ谷に愛されるために避けては通れない道であることは分かっているはずなのに、俺はまだきっと何かに脅えている。先ほどのように、本能的に驚いたり避けたりしたら怪しまれてしまうのだから、しっかりしなければ、と俺は何度も気を落ち着かせようと深呼吸を繰り返す。
「着いたよー」
「うわ、凄い！」
玉に肩を引き寄せられるまま導かれたのは、入口の装飾などだけでも分かるほどの豪華な部屋だった。ドアがバタン、と閉まった瞬間に玉が俺を腕の中に引き込む。首筋に唇が寄せられて、俺は結局ビクッと身体を震えさせてしまう。感じやすいね、と玉がニヤついているのを見て、上手く誤魔化せたのかな、と――困ったふりをして上手く躱していくしかない、と俺は口元に笑みを浮かべた。少しだけ心の準備をする時間が欲しかったのかもしれない。
「あん、玉、待って、シャワーを・・・」
「そのままでいいよ、ミツ・・・もっとこっちにおいで」
胸板を押して逃げようとする俺を力強く引き寄せて、玉はきつく俺の唇を吸い上げる。
「んぅ・・・！！」
眩暈が起きるような息苦しさに俺は身体に力が入らなくなり、足をガクガクと震えさせていると、玉の両腕に背中から抱き込まれる。すぐさま玉の腕がスルッとシャツの隙間から入り込み、素肌の胸を撫でまわし始めるので、俺は乱れた呼吸のまま思わず甘ったるい声を上げてしまう。
「あんっ・・・ああ・・・！」
「・・・本当に全身感じやすいみたいだね・・・」
「えっ、あ・・・やっ！！」
「胸弄られただけで・・・もうこんなになってるね」
俺の下肢の敏感な部分に玉の掌が触れる。恥ずかしくて堪らないはずなのに――
「どうして欲しい、ミツ？」
「・・・もっと、触って・・・」
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作者名：ほわわ
| 作成日時：2020年3月9日 0時
