8-10 side:K ページ17
8-10 side:K
「まったく本当に焦らし上手だね」
でも、と玉の唇が俺の頬にそっと触れて俺はギュッと瞳を閉じた。焦らされるのは嫌いと言っていた玉のことだから、もしかしたらまた機嫌を損ねてしまったかもしれない――でもそれ以上のアクションがなく、俺は恐る恐る瞳を開くと、玉が穏やかな表情で微笑みかけてくれているので、俺は少しだけ戸惑ってしまう。
「ミツからの可愛いキスに免じて許してあげようかな」
「ご、ごめんね・・・」
「こっちこそごめん。お肉を食べる約束はしてたからそっちが優先だよね・・・行こっか」
玉に腕を引かれ、俺は車を降りた。玉が扉を閉めて準備をしてくれている間に、俺は先ほど玉の手がかけられたネクタイにそっと触れた。そもそもちゃんと音声は拾えているのだろうか、姿は見えないけれど、藤ヶ谷とよこーさんはきちんと見守ってくれているのだろうか、と不安になってしまう。
「ネクタイ、どうしたの？」
何か気になる？と玉に問われ、俺は鼓動を跳ね上げさせた。
「あ、あんまりネクタイとかしないから・・・この後、レストラン行くのに大丈夫かなぁって」
「大丈夫だよ、ちゃんと真っ直ぐになってる」
ありがとう、と微笑みながら、俺はドクンと何度も鼓動を高鳴らせてしまう。あまりもういろいろなことを考えるのは止めよう――玉に勘づかれないように。
「じゃあ行こうか」
そう言って肘を曲げて腰に手を当てる玉に、思わず俺は顔を赤らめてしまう。
「ほーら、ミツ、早く・・・お肉食べたいでしょ？」
「う、うん、じゃあ失礼して・・・」
俺はそっと差し出された腕に自分の手を絡め玉に寄り添った。ふふっ、と玉が嬉しそうに微笑むので、俺も玉を見上げて微笑みかける。恋人同士のように身を寄せ合い、笑いあいながらシティホテルへと向かっていく。ホテルに入ると、玉にエスコートされるままエレベーターに乗り込み、最上階へと向かう。
「ここだよ、ミツ」
「わー・・・！すごい景色！」
窓から見える景色は、街並みを見下ろせるものだった。そうは言ってもよこーさんの言っていたように海は見えそうにないけれど――
「玉森様、お待ちしておりました」
「今日は頼むね」
スッと俺から離れて現れた支配人のような人に挨拶をする玉の隙をついて、俺は携帯電話をそっと確認する。すると――
――これ誰の、電話番号・・・！？
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作者名：ほわわ
| 作成日時：2020年3月9日 0時
