8-9 side:K ページ16
8-9 side:K
「待ったら・・・いいの？じゃあ、3・2・1・・・」
「ちょ、早いよ、玉！」
「はい、ゼロ。もう待てませーん」
不意に顎を掬われて、玉にチュッと唇にキスをされて、また身体を撫でまわされて――怒涛の展開についていけない。俺はなされるがまま、両手で玉に待って欲しいと言う伝わらない意思表示をすることしかできなかった。
「やぁ・・・んっ！」
よこーさんと作戦会議をして、いろいろな状況のシュミレーションをしたはずなのに、今の俺はもう玉に翻弄されてしまっている。
「ねぇ、ミツ・・・今、この車でしたいっていったら・・・応えてくれる？」
どうしよう、と俺は真剣な瞳で見つめてくる玉を拒絶していいのか、それとも望まれるまま抱かれた方がよいのか分からなくなってしまう。何か合図が欲しい、と俺はズボンのポケットの中にある携帯の振動を待つ。
――どうしよう、藤ヶ谷、よこーさん・・・！
「・・・ん？」
「あっ、俺の携帯が・・・ごめんね、すぐに切るね」
助かった、と俺は小さく玉に微笑みかけてポケットに手を入れて携帯を取り出すと、玉がギュッと俺の腕を掴み上げた。頭上に抑えつけられてしまい、俺は慌てて携帯電話の画面を玉から見えないようにする。藤ヶ谷かよこーさんが連絡してくれているのなら、それを玉に勘づかれるわけにはいかない。ただでさえ鋭い視線に何かを見抜かれてしまいそうなのだから。振動が止まっても玉は俺の手首を握りしめたままだった。
「・・・俺もミツを優先してるんだから、ミツも俺を優先して」
「た、玉・・・その、ごめんなさい」
「そんなに脅えないでよ、ミツ・・・今日はちゃんと優しくするから」
大好きだよ、と玉の片手がそっと俺の頬に触れる。ようやく戻ってきたこの優しい微笑みが消えてしまうのが怖い。その手が俺の首筋を撫で、そしてネクタイを外しにかかる――さすがにそれはまずい！と俺は玉に自分からキスをする。このネクタイにVIPルームに仕掛けないといけないマイクが入っているのだ。外された瞬間に音声を拾われているとがバレてしまったら、玉は俺の背後にいる藤ヶ谷やよこーさんの正体に行きついてしまう。俺だって玉にどんなことをされてしまうか分からない。息苦しくなって自分から唇を離してしまうと、少し驚いている玉が、どうしたの？と言わんばかり少し困ったような笑みを浮かべている。
「や、やっぱり・・・お肉食べてからじゃ・・・ダメ？」
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作者名：ほわわ
| 作成日時：2020年3月9日 0時
