8-7 side:K ページ14
8-7 side:K
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車の助手席に乗り揺られながら、俺は運転する玉をミラー越しに見つめる。ピシッと決まっているスーツ姿でスマートに運転する姿はとてもかっこいい。そして、俺を退屈させないように優しくて楽しい会話をしてくれる。今日は美味しいお肉を食べに連れて行ってくれるらしい――そのことを考えただけで俺は思わずお腹を鳴らしてしまってちょっと恥ずかしかった。信号で車が止まると、玉が微笑みながらこちらを向いた。
「ミツ、そのホルダーにおいてあるカフェラテ、自由に飲んでいいから」
玉の言葉に俺は目の前のドリンクホルダーに目を向けると、俺の一番好きなカフェラテが置いてある。偶然でも嬉しいな、と思いながら、俺は口元を緩ませて玉に微笑んだ。
「これ一番好きなやつだ・・・ありがと」
「・・・何も入ってないから安心して」
無理もないけど、と玉が優しい声色で声をかけてくれる。
「い、いや、そんな心配なんて・・・」
見透かされた心を誤魔化すようにして曖昧に笑いながら、いただきます、と俺はストローに口をつけながらも、怖くて飲む量は少しだけにしてみた。これからデートだけれども――用心するに越したことはないだろう。不意に組み敷かれた瞬間を思い出し、少しだけ冷たくなった空気感と込みあがる複雑な想いを緩和しようと俺は話題を変える。
「立派な車だね」
いい匂いするし、と俺は車に取りつけられている可愛い芳香剤に目をやる。車のシートもふかふかで真新しい。
「そうかな、今日初めて乗るからちょっと勝手が分からないけど」
「えっ、初めて！？」
まさか俺とのデートのためにわざわざこんな高級車を新車で用意してくれたのだろうか――何だかいろいろ申し訳なくなってしまう。じゃあレンタカーなのかな、と思い、あまり汚したりしてはダメだと背筋をピンと張ると、玉の掌がそっと俺の髪の毛を撫でる。
「大丈夫、ちゃんと自分のお金で買ったから・・・くつろいで欲しいな」
「そうなんだ・・・えっ、ええっ！？」
驚きを隠しきれない顔をした俺に、クスッと玉が微笑んだ。
「仕事がいろいろ上手くいってるからね」
「玉のお仕事って・・・」
それは内緒、と玉の指先が俺の頬をツン、と優しく突いた。信号変わった、と玉がまた車を走らせていく。こんな高級車をすぐに購入できるような財力――藤ヶ谷の言う通り“悪い人”との薬の売買をしてもうけているのだろうか。ドクン、と俺の胸が不意に高鳴る。
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作者名：ほわわ
| 作成日時：2020年3月9日 0時
