7-26 side:K ページ50
7-26 side:K
「えっ、えっ！？」
そのまま腕の中に引き込まれ、俺は何度も目をパチパチとしてしまう。
「玉にそう言ってただろ・・・ワン」
俺を揶揄っているのは分かるけれど、その低音の響く犬の鳴き声の真似にすら、ドキッとして胸の高鳴りが抑えきれなくなってしまう。藤ヶ谷に頬をペロッと舐められて、俺は顔を真っ赤にしてしまった。
「藤ヶ谷は何で俺を困らせることばっかり・・・！」
「北山」
抗議のために見つめた瞳は、名前を呼ばれて藤ヶ谷と目が合った瞬間に、心を奪われて蕩けてしまったのだろうか。その瞳に映る自分自身は目の前の相手を恋しくてしょうがなくて、もっと欲しいとまるで主人に乞う犬のように――ズボンの中を動き回る手に、もっと撫でて欲しいとおねだりをしてしまいたくなる。今度は唇を藤ヶ谷の舌に舐められて、俺は両手を藤ヶ谷に回して唇を突き出してしまう。そのとき――
「入るよ、太輔！」
ノックもなしにドアを思いきり開くよこーさんの声に俺は思わず身体を慄かせてしまった。
「・・・やっぱり太輔といる・・・！こら、みっちゃん！！」
「あっ、や・・・よ、よこーさん！？」
慌てて藤ヶ谷から離れて、無意識に気をつけの姿勢をするかのようにピンと背中を伸ばした。
「太輔も！あれだけ言ったのに！」
みっちゃんは大事なんだよ！と怒りの表情を隠そうともしないよこーさんに俺は思わず身体を竦めさせてしまった。よこーさんは俺達に駆け寄ると、まるで当たり前であるかのように俺の衣服を整えていく。
「よこーさん・・・ごめんなさい」
「よし、今日はしてないみたいだね」
間に合ってよかった、と手の甲で汗を拭う仕草をするよこーさんの言葉に、俺は諸々を確認された気恥ずかしさが一気に込み上げてしまう。
「みっちゃん、とにかく今日はもう寝よう。太輔が夜這いしないように俺がちゃんと見張ってあげるから」
おいで、とよこーさんに腕を取られて、俺はうろたえながらも抗えずについていく。扉を出る瞬間に藤ヶ谷に視線を送ると、ちょっとはにかんだ笑顔を見せている。
「藤ヶ谷・・・！」
「・・・おやすみ、北山」
パタン、と扉が閉まり、その姿が見えなくなってしまうと、一気に寂寥感が込み上げてきて泣きそうになってしまった――
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作者名：ほわわ
| 作成日時：2019年7月25日 1時
