7-14 side:K ページ38
7-14 side:K
「声が聴けて嬉しかった・・・じゃあ土曜日に、ミツ」
「・・・うん、またね、玉・・・」
優しい声色に俺はまた罪悪感を感じて、電話を切った後に頭を抱えてしまう。このまま俺は玉を騙していいのだろうか。どうしても玉が悪い人には見えない――
「・・・とりあえずよこーさんに報告しなきゃ・・・」
俺は携帯電話を握りしめたまま、恐る恐る床に足をつけた。思ったよりも先ほどより痛みは和らいでいる。恥ずかしがりながらも薬を塗ってもらえたおかげかも、と俺は頬を赤くする。そっと部屋を出て俺は居間へと向かった。
「よこーさ・・・」
部屋に入るとよこーさんが誰かと電話と話している最中だったらしく、シー、っと指を口元にあてている。俺は両手で口を塞いでコクコクと頷いた。今度は耳を塞いでソファーに蹲った。
「はい・・・かしこまりました。スーツですね、用意しておきます・・・それでは」
ピ、と電話を切る音がして、よこーさんがOKのマークを出してくれたので俺は座り直した。
「みっちゃん、ごめんね」
「よこーさん、こっちこそ・・・あ、そうそう、玉から連絡があって！」
「・・・本当に！？何を言ってた？」
「今度の土曜日・・・いいレストランに連れて行くからちょっといい格好してきて欲しいって・・・！」
「・・・そうなんだね、みっちゃん！じゃあきちんと用意しておくよ」
さすがよこーさん話が分かる、と俺はニッコリと微笑んで見せた。ついでに待ち合わせの場所がここの近くの公園であることを伝える。
「それだと、みっちゃんのお家がこの辺だと思われている可能性が高いな。みっちゃん、できれば今度のデートまではこの家に泊まった方がいいかも・・・」
「えっ、どうして？」
「この辺に住んでいるはずなのに全然違う家に帰ったりしたら怪しまれてしまうかもしれない。見張りがつけられてるかもしれないし」
その言葉に俺は息を呑んだ。確かに俺は学校を出たところを待ち伏せしていた宮田に連れ去られて――玉が宮田に俺を送り届けさせたのも俺の自宅を探るためだったのかもしれない。俺の正体がばれてしまったら、藤ヶ谷が――それだけは絶対に避けなければ、と俺はコクッと頷いた。
「・・・じゃあ、しばらくお世話になります」
「ありがとう、みっちゃん。太輔にも連絡しておくね」
もうすぐ帰ってくると思うけど、という言葉に俺の胸がドクッと高鳴った。藤ヶ谷がまたここに戻って来るのだ――
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作者名：ほわわ
| 作成日時：2019年7月25日 1時
