7-13 side:K ページ37
7-13 side:K
「なら、忠告はさせてもらうよ」
玉森はスッと立ち上がり、藤ヶ谷の肩にそっと手で触れる。
「・・・俺とミツのデートの邪魔は絶対にしないでね」
「まさか、そんな野暮なことはしない・・・」
ならいいけど、とポンポン、と肩を叩き玉森は振り向かず手を挙げて校舎の方へと歩いて行ってしまう。その後ろ姿を怜悧な瞳で見つめた藤ヶ谷は踵を返しニヤッと口元を緩ませた。
「完全に北山に心を奪われているな、玉の奴・・・俺に嫉妬するほど北山のことを・・・」
予定通りだ、と藤ヶ谷は口元に笑みを残したまま、携帯に目を落とした。同時に玉森も携帯電話を耳に宛がう。
――さあ、本当の化かし合いはここからだ。
***
「んー・・・電話・・・？」
携帯の着信音が鳴り、俺は寝ぼけた状態で自分の携帯電話を探す。ベッド脇のバッグから振動している携帯電話を取り出し、俺は相手も確認せずに手に取った。
「・・・えっ、玉・・・？」
「ミツ、今、何してた？」
「あ、その・・・お昼寝」
その回答可愛いなぁ、と電話越しの玉は小さく笑っているようだった。俺はちょっと戸惑ってしまって意味なくキョロキョロしてしまう。この部屋を出てよこーさんにも話を聞いてもらったほうがいいのか――でもタイミング悪くよこーさんの声が玉にでも聞かれてしまったらそれはそれでまずいか、と俺はベッドにしっかりと腰を落ち着けた。
「ごめんね、起こしちゃって・・・ミツの声が聴きたくなって」
「ううん・・・どうしたの？」
「土曜日のデートなんだけど、ちょっといいレストランに連れて行きたくて・・・ドレスコードだけ後でメールしていいかな？」
急に送ったらびっくりするかなと思って、と話す玉の声色はとても優しい。
「ほ、ほえっ！？だ、大丈夫かな、俺、そんな立派な服を持ってないかも」
「・・・え？この間俺の家に来た時のスーツで大丈夫だよ？・・・あれ、ミツの服じゃないの？」
玉に不意に核心を突かれて、俺は心臓を思わずドクンと高鳴らせてしまった。慌てて言葉を紡ぎだす。
「あ、それなら大丈夫・・・何か着物とかタキシードとかかなって思っちゃって！」
「ふふ、ごめんね、そんな凄いところには連れて行けないけど。じゃあ11時に宮田がミツを見送った公園で待ち合わせね」
了解、と俺は電話だというのに大きく頷いてしまった。
「ミツ、早く会いたい」
「玉・・・うん、俺も・・・」
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作者名：ほわわ
| 作成日時：2019年7月25日 1時
