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2-4 side:K
香水を買う余裕なんてない――それにしても玉はどうしてこんなに距離が近いのかと俺は戸惑いを隠せない。
「・・・こ、香水なんてつけてないよ!」
「ほんと?でも凄くいい香りするよ」
石鹸の香りかな、と玉はさらに顔を寄せてくる。鼻先が首筋に触れて、続いて唇が寄せられる。チュッ、というリップ音がして、俺は身震いが止められなくなってしまった。いくら我慢するように指示をされていてももう限界だ。さすがに藤ヶ谷に握られている手を解いて、玉の肩を押しのけてしまった。少しびっくりした顔を向ける玉に俺は慌てて声をかける。
「あ、汗っぽいと思うからやめて・・・」
「その方が興奮するよ・・・可愛いなぁ、その反応・・・ミツ、経験ないの?」
「な、何の・・・?」
先ほど藤ヶ谷に揶揄われた経験を生かしてなのか、俺は反射的に聞き返してしまう。それにちょっとキョトンとした玉は、口元を綻ばせた。
「クスッ、その感じ・・・ないみたいだね」
さらに楽しみになった、と玉は俺から手を離してご満悦の様子で鼻歌を歌いだす。機嫌も良くなったみたいだしこれで良かったのかな、と俺は思わずまた安堵のため息を吐いた。それにしてもこの仕事は心臓に悪すぎて胸が痛い。今すぐに車を下りたい。思わず涙がじわっと込み上げてきた。
「・・・おっと、着いたみたいだよ」
「うわ・・・凄いお家だね」
豪邸というに相応しい家の門扉が開き、車はその中に入っていく。
玉に腕をとられるままに藤ヶ谷と並んで家の中に入る。執事さんや何人かのメイドさんに頭を下げられながらたどり着いたのは――
「さぁ、どうぞ」
「凄い綺麗にしてるんだね」
「まぁ毎日放っておいても掃除してもらえるからね」
ソファーにでも座ってよ、と促され、藤ヶ谷と向い合せに座る。
「じゃあミツのお待ちかねのお寿司を持ってこさせるから待っててね」
一度玉が部屋を出ていくと、俺はまた無意識にため息を吐いた。縋るように俺は目の前に座る藤ヶ谷に視線を向ける。
「・・・あのさ、藤ヶ谷」
すると、藤ヶ谷はまた微笑みながら人差し指を唇の前に立てている。
「・・・誰が聞いているか分からない」
「・・・っ・・・」
そんなに危険なミッションに巻き込まれているのだろうか――
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作者名:ほわわ | 作成日時:2019年5月7日 0時